「大丈夫、きっと成功する。」鳴子ダムの建設がはじまったとき、工事をする人たちは、自分で自分に言い聞かせていました。というのもこのダムの建設は、日 本で初めて、日本人だけの手でつくる事になったからです。それまでは外国人の技術者を招き、その人達に教えられてダムをつくってきました。でも今度は全部 自分たちでやるのです。それだけに日本でも特に優れた技術者が、たくさんここに集まってきました。
ダムをつくるには、まずいろいろな準備をしなければなりません。調査や設計、さまざまな試験。工事を始める前に、材料や機械をどうやって工事現場まで運べ ばよいのか、など問題はたくさん出てきました。険しい谷の中では、自動車で運ぼうとしても道路がありません。もちろん鉄道の線路などもありません。まず材 料や機械などを運ぶための、新しい道路をつくる事からはじまりました。
クレーンなど工事に必要な機械を運び、工事のための様々な設備をつくります。しっかりとした準備をして、ようやくセメントを入れ、コンクリートを組み上げていきました。
コンクリートを強くするために、大量のセメントを入れます。このコンクリートが固まるときには、たくさんの熱が出ました。それを冷やすために上から水をま き、コンクリートの中に幅1メートルの間隔で、高さ1.5メートルおきに直径15センチの鉄パイプを埋め込んで、1カ月間も水を流したままにしました。そ れからコンクリートの表面にコールタール(注1)のようなものが浮いてくるので、それを取り除くために水を流しながら、ブラシで洗うこともしました。
時には地滑りなどがおきて、何日も寝ないで作業を続けなければならないことがありました。しっかり止めたはずの水がどこからか漏れてきて、昨日つくったば かりのコンクリートの表面をはがしてしまった事もありました。突然岩石が落ちてきて頭に当たったり、穴が崩れて生き埋めになって死んだ人もいました。それ でもみんな「これまで水害にあった人たちを救うため、何としてもこのダムをつくるんだ」と強い決意で工事を続けたのです。