遺跡保存のための計画変更

柳之御所遺跡・接待館遺跡と一関遊水地計画の変更

平泉世界遺産に配慮した治水事業

北上川右岸衣川地区及び支川衣川周辺には、中尊寺、毛越寺をはじめ浄土思想に基づいて造られた多くの建築・庭園及び考古学的遺跡郡が点在していることから、一関遊水地事業において、堤防ルート上に位置する柳之御所遺跡、接待館遺跡の保存のため堤防ルートを変更。これにより、平成13年に世界遺産暫定リストに登録、平成23年6月には世界遺産に登録となりました。

柳之御所遺跡

「柳之御所遺跡」が位置する岩手県西磐井郡平泉町は、平安末期に栄えた奥州藤原氏の栄華をしのばせる歴史の町です。「柳之御所」は当時藤原氏の政庁であった所と考えられています。

当初は、この遺跡を通る形で一関遊水地の堤防及び国道4号平泉バイパスが計画されましたが、昭和63 年度から行われた工事予定地での事前の緊急発掘調査が進むにつれ、この遺跡がかつての「柳之御所跡」であることを裏付ける貴重な遺品・遺構が相次いで出土しました。

この発掘調査結果から本遺跡は、我が国の歴史を解明する上で重要であるとの判断から、遺跡区域を避け、堤防及びバイパスルートを川側に変更しました。

堤防ルート変更の経緯

昭和56年10月 ◎平泉バイパス都市計画決定。用地取得開始
昭和63年4月 ◎発掘調査開始
平成2年11月 ◎「柳之御所遺跡保存」に関する20 万人の署名簿が建設省・文化庁・岩手県・平泉町に提出される
平成4年12月 ◎調査中の遺跡が吾妻鏡に記載されている平泉館(柳之御所)であることを、平泉遺跡発掘調査指導委員会が答申
平成7年3月 ◎平泉バイパスルート都市計画変更
平成7年7月 ◎北上川上流改修計画(一関遊水地計画)変更
平成14年 ◎川側への前出し工事を実施
平成16年11月 ◎北上川・柳之御所遺跡保存に伴う河道付替完了記念式典

接待館遺跡

岩手県奥州市衣川地区の周辺調査によって範囲が明確になった接待館遺跡は、大規模な塀に囲まれる「館」の構造を持っており、内塀の埋土に大量のかわらけが含まれています。

これは柳之御所遺跡と同様に、塀の内側でかわらけを使った儀式、宴会礼が盛んに行われたことを示しており、重要な政治的な場であったと考えることができます。

このような構造は、平泉町内でも柳之御所遺跡以外に例はなく、接待館遺跡は平泉町内の史跡に匹敵する重要な遺跡であり、この遺跡の現状保存を行うため、遺跡を完全に迂回するよう堤防ルートの変更を行いました。

堤防ルート変更の経緯

平成14年4月 ◎衣川築堤に着手
平成16年8月 ◎発掘調査
平成16年10月 ◎「接待館」遺跡発見
平成18年2月 ◎調査指導委員会(H17第3 回)
平成18年5月 ◎衣川築堤工事を中断
平成19年1月 ◎調査指導委員会(H18第2 回)
平成19年2月 ◎衣川地区へ説明(岩手県)
平成19年3月 ◎岩手県知事から東北地方整備局長へ要望
◎遺跡保存のための堤防ルートを変更決定

一関遊水地事業