“…那須さんの住む南紙漉町はこうした街である。那須さんのやり方は、除雪車のようなやり方ではない。町の人と協議して、道路の両側に設けられた水路(と言っても昔からのものであるからそれほど深くて大きなものではない)に、少しずつ、雪の塊をこまめに砕いて入れ、水の流れで消す方法である。各戸が一度にどっと入れたのでは、水路の水はこれを消すことができない。雪の塊が流れを塞ぎ、町中が水びたしになる。これでは上流部はよいが、下流部は困る。だから流れ水を利用する場合は、やはり少しずつ、なるべく細かく砕いて入れなければならない。
那須さんは、町内の人々と語らって南紙漉町克雪水利組合を組織し、町内をいくつかの組に分けて、上流部から時間を決めて、雪を細かく砕いて水路に入れるようにした。
入れるにしても、流れ水の温度が四度 C になってからである。四度というのは、那須さんが長年の観察から割り出した温度で、四度にならないと雪は融けないというのである。これは、すばらしい知恵である。…”
(「2流雪溝の雪は四度で消える」 p109 より抜粋)