“…ある猛烈な吹雪の夜、二人は山小屋の火の傍らでうとうとしていたが、昼間の疲れでいつしか深い眠りに陥っていた。
ふと、息子の狩人は不吉なほどの冷気を覚え、思わず目をさました。何やら、小屋いっぱいになるような白い着物をまとった女が、父親の寝顔に「ふうっ」と真っ白な息を吹きかけているのである。若者は驚きと恐ろしさの余り、声も出なかった。息を殺して、じっと身を固くしていた。
ひとしきり息を吹きかけていたその女は、今度は息子の方に寄ってきて、上から、じいっと息子の顔を見つめ始めた。女の顔は氷のように透き通る白さで、体全体から異常なほどの冷気を放っていた。
「お前たちは、入ってならない山に入って来た。その罰として、二人の命を貰わねばならぬが、お前は余りにも若い。この度だけは許してやる。その代わり、決して決して今晩のことは他人に話してはならない。他言するときは直ちにお前の命は奪われるであろう。」と言ったかと思うと、小屋いっぱいの女の姿は消え、もとの暖かさが戻ってきた。…”