令和3年度選奨土木遺産 認定

北上川上流総合開発ダム群

■ 土木学会選奨土木遺産とは ■

土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、平成12年に認定制度を設立いたしました。
推薦および一般公募により、年間20件程度を選出しています。

北上川上流総合開発ダム群 五大ダムは、北上川流域の治水を最大の目的にしながら、
発電・灌漑用水・上水などの機能を併せた多目的ダム群として地域を支える土木構造物群です。

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北上川五大ダム群

五大ダム群の竣工年

田瀬ダム● 1954(昭和29)年:岩手県花巻市
湯田ダム● 1964(昭和39)年:岩手県和賀郡西和賀町
四十四田ダム● 1968(昭和43)年:岩手県盛岡市
御所ダム● 1981(昭和56)年:岩手県盛岡市, 雫石町
石淵ダム● 1953(昭和28)年:岩手県奥州市
  ▼再開発▼
胆沢ダム● 2013(平成25)年:岩手県奥州市
 石淵ダムの再開発として、役割を引き継いでいる。

五大ダムの歴史

大正15年

「河水統制」という画期的な思想(物部長穂博士)

「河川改修によって河道を拡げても、そこを洪水が流れるのは1年のうちで極めて短時間であり、もし、その洪水を上流で貯留できれば、それを 渇水時に発電や灌漑に利用できる」とし〝洪水の資源化〞という画期的な考え方が示された。

昭和16年

大河川にして我が国初の水系一貫による治水計画策定
「北上川上流改修計画」(富永正義博士) 

昭和16年、物部長穂博士の提唱する「河水統制」思想を取り入れた、我が国初の水系一貫による治水計画「北上川上流改修計画」が誕生。既往 最大洪水とされた大正2年洪水を対象として、岩手県内の北上川上流本支川に「田瀬ダム」「石淵ダム」「湯田ダム」「四十四田ダム」「御所ダム」の5つのダムを建設し、下流への流下量を低減することで、一関市下流の狭窄部問題を克服するという、水系一貫の画期的な治水計画が立てられた。

なお「北上川上流改修計画」が誕生してから、令和3年で 80年目となる。

昭和28年

北上川特定地域総合開発計画(KVA)の策定

昭和28年には、国土総合開発法による復興に向け、特に開発が遅れていた地域に焦点を当てた「特定地域総合開発事業」の第1号として「北上川特定地域総合開発計画(通称 KVA)」が閣議決定。主に治水・農地灌漑の両面から多角的に開発し、地域の経済発展を目指し、事業期間は概ね10年とされた。既に着工していた「石淵ダム」「田瀬ダム」を含む5つのダムの建設がその柱。日本の河川総合開発においてモデルとなったアメリカ のテネシー川流域開発公社(TVA)にならい、KVA(Kitakami ValleyAuthority)とも呼ばれている。

5大ダム群(北上川上流総合開発ダム群)

KVAに基づき建設された「5つの多目的ダム」により構成される土木構造物群であり国直轄で建設。現在も、北上川流域の治水を最大の 目的にしながら、発電・灌漑用水・上水道用水及び工業用水などの機能を併せた多目的ダム群として地域を支える土木構造物群として稼働 している。

北上川は、岩手県と宮城県にまたがって流れる東北最大の河川です。
岩手県岩手町の御堂観音境内の湧水(弓弭の泉)を水源とし、途中、
一関の狭窄部を経て宮城県に入り、太平洋に流れ込んでいます。
川の長さは約249km、流域面積は約10,150㎢(内岩手県分7,860㎢)です。
北上川上流域のうち、五大ダム流域が約4割の面積を占めています。

五大ダムの比較

(令和3年11月作成)
田瀬ダム 石淵ダム 湯田ダム 四十四田ダム 御所ダム 胆沢ダム
水系/ 河川名 北上川/猿ヶ石川 北上川/胆沢川 北上川/和賀川 北上川/北上川 北上川/雫石川 北上川/胆沢川
ダム型式 重力式コンクリート 表面遮水型ロックフィル アーチ・
重力式コンクリート
重力式コンクリート・
アースフィル複合
重力式コンクリート・
ロックフィル複合
中央コア型ロックフィル
流域面積 740.0㎢ 154.0㎢ 583.0㎢ 1,196.0㎢ 635.0㎢ 185.0㎢
ダム高 81.5m 53.0m 89.5m 50.0m 52.5m 127.0m
ダム長 320.0m 345.0m 264.9m 480.0m 327.0m 723.0m
堤体積 420,000㎥ (フィ)411,000㎥
(コ)31,000㎥
379,900㎥ (コ)290,000㎥
(土)92,150㎥
(コ)220,000㎥
(土)980,000㎥
13,500,000㎥
湛水面積 6.0㎢ 1.1㎢ 6.3㎢ 3.9㎢ 6.4㎢ 4,4㎢
総貯水容量 146,500,000㎥ 16,150,000㎥ 114,160,000㎥ 47,100,000㎥ 65,000,000㎥ 143,000,000㎥
洪水調節容量 84,500,000㎥ 5,600,000㎥ 77,810,000㎥ 33,900,000㎥ 40,000,000㎥ 51,000,000㎥
計画洪水流量 2,700㎥/s 1,200㎥/s 2,200㎥/s 1,350㎥/s 2,450㎥/s 2,250㎥/s
計画調節量 2,200㎥/s 300㎥/s 1,800㎥/s 650㎥/s 1,250㎥/s 2,210㎥/s
発電量 27,000kw 14,600kw (仙 人)37,600kw
(和賀川)16,300kw
15,100kw 13,000kw (胆沢第1)14,200kw
(胆沢第3)1,500kw
着工/竣工 S16年/S29年 S21年/S28年 S28年/S39年 S37年/S43年 S42年/S56年 S63年/H25年
竣工からの年数 67年 68年 57年 53年 40年 8年
技術的ポイント ◎国内初の高圧スライドゲート
◎国内初のAEコンクリート
◎国内初のロックフィルダム ◎国内初の圧着式オリフィスゲート
◎フリップパケットによる減勢方式
◎土木界初のドラム型重液選別
◎重力式コンクリート・アースフィル複合ダム
◎重力式コンクリート・ロックフィル複合ダム ◎最新ICT技術と大型重機の連携による正確で効率的な施工

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