意見交換会:「まちなか居住ついて」
北原先生

それでは、議論を始めたいと思います。
先ほど中村先生から鶴岡の事例を元にしながら、実はまちなか居住を考えていくときに、まちなかの例えば空き家など住宅のストックの中に外から人が入り込んでくる可能性について議論することはほとんどありませんでした。マンションが建つという話ばかりでした。地方都市の場合、高齢者がまちなかの住宅ストックから出て行くような事例がありましたが、それを契機にもう一度再生していくということは、小さい都市においてはあり得る話だと思います。

一方、お話を聞いていてもうひとつの空き家を考えたのですが、40年代50年代に建てていた郊外に広がった住宅が、今のまちなか居住のブームの時に高齢化し、小学校も減り、そこが空き家になるということも出てきます。ですから、今日はそういう郊外のこれから出てくる空き家の問題と、まちなかの問題との交換のようなメカニズムが、所有ではなくて賃貸ではうまくいかないかなというあたりが、これからの研究対象かなと思って見ていたのですが、とても重要な情報を提供して頂きまして、ありがとうございました。
また、野嶋先生に説明して頂いた上尾の事例というのは、住み続けられるまちづくりということで進められた、私たちにとってはまちづくりのバイブルみたいな事例でした。上尾の場合は県と市が一緒にできたということで、普通ならあり得ないような合併施行がうまくいきました。

今日はまず鶴岡市と福島市、青森市から資料を用意して頂きましたので、その三市にお話し頂き、そのあと皆さんと意見交換を進めたいと思います。
それでは鶴岡市の方からお願いします。

鶴岡市

最初に中心市街地の個別プロジェクトの紹介ということでお断りしておきたいと思います。

平成12年度に旧建設省の「歩いて暮らせるまちづくり事業」の指定を受け、市民参加型のワークショップで、鶴岡の中心部に福祉都心やまちなか居住の拠点をつくったらどうかという意見が挙がりました。そこで中村先生の調査とあわせて、様々なプロジェクトを考えているところです。明日、市民報告会で、元気居住都心調査研究を市民の皆さんに報告し、平成17年度より具体的に取り組みを始めたいと考えています。ですから、今回お話しする部分については、あくまでも研究というかたちでご理解頂きたいと思います。

まず、鶴岡市の概況を説明します。

鶴岡市はもともと城下町で、今の鶴岡公園が城址公園にあたります。まちなかを斜めに流れているのが内川で、内川を挟んで西側が昔でいう城下町になります。江戸時代までは城下町でしたが、明治大正と変遷するにつれ、官庁街となりました。今回のプロジェクト対象地がある川の東側が町人町です。したがって、川を挟んで武家町と町人町が明確に分かれているまちです。

鶴岡市は大きな災害、震災に襲われていないため、城下町の町割がそのまま残っています。曲がりくねっている道路があるので、初めてくる人には分かりづらいまちになっています。そのため、普通であれば駅はまちの中心部に配置するのでしょうが、鶴岡市の場合は中心から外れた北側の方に配置しています。したがって、中心商店街は駅からまっすぐ南におり、川を渡って鶴岡公園の方に向かっていくというウナギの寝床のようなかたちとなっています。面的ではなく線的な商店街を形成していまして、この距離がだいたい 2.5kmで、シャッター通りになっております。駅前に関しては昭和60年当初、再開発事業により商業ビルができたのですが、今月の20日にその企業が撤退して、その後処理を今後やっていかなくてはならないという状況です。

赤丸が銀座元気居住都心地区で銀座通りがあり、昔は庄内の商業の中心地でした。ここは空洞化しており、シャッター通りになっています。中心部にA敷地B敷地C敷地という事業地区があり、 1,000坪の未利用地が残っています。B敷地については、個人の産婦人科病院がありましたが郊外の方に移転し、その建物がそのまま残っています。

そこで土地の有効利用と視点で3本の柱を考えました。

一つ目はまちなか居住の推進です。

二つ目は元気シニアの活動拠点の整備で、団塊世代、しかも元気なシニアを対象に新たな地域活動と連携したもののコミュニティにより、まちなかを再生しようという考え方です。通常再開発といいますと、低層階に商業スペースを持ってきて、上の方に居住を持ってくるというのがよくあるパターンですが、空き店舗のある商店街の商業を拡大するために、商業店舗を入れるのは決して悪いことではないと思いますが、商業を核としてまちづくりを進めても、ダメだろうということで、人が集まる、人が住む、人が活動することで生まれるコミュニティにより都市再生できないかと考えています。

三つ目は、民間主導型事業で民間主導を考えています。

先ほどの元気シニアの活動拠点という意味では、仮称つるおかシニアセンタ−というのがあります。これを大きく分けて2つ考えています。

ひとつはアミューズメント空間を整備しようということです。これは、中心部に喫茶店や本屋がなくなったということで、カフェやイベントホールなどの年配の方が気軽に来られるような空間構成を考えています。

もうひとつは、地域貢献部分を担ってもらうと考えています。具体的には、鶴岡市も合併を控えており、行政のスリム化が余儀なくされています。従って、住民一人一人への行政サービスが薄れていくことも考えられるので、コミュニティビジネスのようなものと組み合わせて、元気シニアのセンターをつくり、半分ボランティア、半分ギャランティになるようなかたちでがんばってもらおうと思っています。

先ほどUターン、Sターンという話が出ましたが、鶴岡市と首都圏を行ったり来たりする、いわゆる地方と都会の二拠点の交流居住という発想から県内の在住者向け短中期滞在型住宅のマンションを考えています。要はまちの文化を、商業ではなく、居住を核にしたコミュニティ文化にしたいというものです。世田谷区の泰山館という集合住宅のように、例えば入居者がアトリエを開いたりレストランを経営したり、自分たちがいろいろな使い方をして、人が集まってくる場所になってほしいと、地元の建築士と建設業者に提案させて頂いています。

それから、B敷地というのがケア付きの高齢者住宅です。ここは先ほどの産婦人科医院だった敷地で、昔の病院は壊して新しく建てようと、土地の所有者である元病院の個人の方が、実際に活動を始めています。それが「仮称つるおかに元気居住をつくろう会」で、今呼びかけセミナーというのをやっており、ここに住みたい人、この事業に賛同できる方々を集めて、実際に事業化できるかを検討しています。この事業の進め方として、PPP、要は民間と公共の事業連携で、あくまでも民間主導で考えています。行政が担える部分と早稲田大学が担える部分といったように、実際の事業の出資、運営、管理について、特別事業会社方式となるかは別として、 17年度以降研究会を立ち上げやっていくということです。これが17年度から19年度の取り組みで、これは民間がこれから研究進めていく上で、話にのらなければそれまでかなと思っておりますが、あくまでも我々建築士、建設業界、それからシニアセンターはまちづくり会社ということを基本に考えておりますので、色々なまちづくり団体、NPO、TMOとも連携してやっていきたいと考えています。

以上でございますが、鶴岡市のホームページに各課の取り組みというのがあり、その中に都市整備課の中心市街地まちづくりというタイトルがあります。その中で、明日発表する研究報告書の全容がPDF版でダウンロードできるようになっていますので、ぜひ見て頂ければと思います。


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