東北地方の地方都市における「コンパクトシティ」とは何か/「コンパクトシティ」実現に向けた方策は、どんなものか
北原先生

それでは意見交換を始めたいと思います。
先程の中出先生のお話は、地方都市で実際に仕事をしている人にとっては、非常に分かりやすく、具体的で、まさに今現場で対面していることであったかと思います。農振白地の問題や、区域MPによる白地地域の土地利用方針の検討、それから都市計画法34条8の4等、リアリティのある話でしたので、そのような土地利用の規制誘導に関して、本日は議論をしたいと思います。その前に、お忙しい中来て頂いた北海道大学の瀬戸口先生から資料が出されていますので、北海道で考えている「コンパクトなまちづくり」を説明して頂きたいと思います。それでは、瀬戸口先生、お願い致します。

瀬戸口先生

こんにちは。北海道大学の瀬戸口と申します。
北海道でも「コンパクトなまちづくり」をどう進めるかという議論を始めております。北海道では、大きく北海道開発局と北海道庁が同じテリトリーで行っているものですから、東北地方のように国と6県という構造とは少し違いまして、国(開発局)の方はどちらかというと大きなビジョンを考え、道の方はより具体的、技術的なことを行っております。先程の中出先生の資料にもありましたように、北海道は土地利用に関して非常に頑張っている自治体が多いです。というのも、農林水産省が北海道は特に守ろうとしていまして、北海道の農政局は農地転用等に対して非常に厳しい規制を行っています。そのことが、コンパクトな都市を考えていくきっかけのひとつとなっています。今日は簡単な話題提供ということで、北海道でどのようなことが議論されているかを御紹介したいと思います。
「コンパクトなまちづくり」の研究会の参加主体は人口10万人以上の、函館、帯広、釧路、苫小牧、二見、旭川、室蘭、といった自治体の方々に参加して頂き、現在、大きく4点ほど議論されています。
一つ目は、「コンパクトなまちづくり」を考えている際、非常に大きい問題となっている中心市街地についてです。郊外の土地利用を規制することもありますけれど、中心市街地の土地利用を更に促進させていくことが議論されました。地方都市の場合は、容積率の高い中心市街地のみを考えるのでなく、もっと中立くらいの中心市街地を検討しても良いのではと考えています。都心では容積率が大きいところで600%くらい指定されているが、もう少し容積率を下げて上手に土地利用の転用を図っていくような方向性で中心市街地を捉えた方が良いのではないかと考えています。
二つ目は、公共交通と土地利用をもう一度結びつけた考え方についてです。土地利用と交通体系は別々に考えられていますが、自動車社会や高齢化社会に拍車がかかる中、公共交通の体系に合わせた土地利用の方法を考えてはどうだろうかと、つまり市街地が単に同心円上に広がるのではなくて、幹線道路等の公共交通の体系に合わせて容積率や住宅地、市街地の開発をもう一度見直すべきではないかという議論がなされています。
三つ目は、フリンジの問題についてです。北海道でも白地の建蔽容積を検討しておりまして、結局建蔽率60%、容積率200%となりました。農地の建蔽容積の問題は非常に難しく、農家でも農地はたくさんあるが、宅地が非常に狭く、建蔽率を超えてしまい、既存不適格になってしまうという問題を抱えています。その中で郊外部・農地の部分の土地利用促進をどう図っていくかということと、白地地域の問題とを合わせて議論をしております。また白地地域や郊外の幹線道路は、市街化として非常に需要が高いのですが、農業としても道路基盤整備は需要があります。現在農業経営が大規模化しており、耕作機械は大きいものでなくてはならない。そうなるとやはり接道していることが農地の価値として求められているような状況もあります。よって、幹線道路沿いを全て市街化するという極端な議論ではなくて、それをどのようにコントロールするかということも今後の課題となっていきます。
四つ目は、一番深刻な問題である郊外住宅地についてです。新住宅市街地開発法時につくられたニュータウンが現在かなり高齢化を迎えていて、郊外部に取り残されている状況にあります。コンパクトシティということを考える際、この住民が中心市街地に移ってこられるようなプログラムをどう立てるかが課題です。
ところで北海道は雪の問題があります。冬になりますと郊外の住宅地が雪で閉ざされてしまい、お年寄りの方々が残されているという状況にあります。そのような中、最近、郊外から中心市街地に移ってきたいという人が増えています。帯広市では、まちなかに最近マンションが増えてきています。そのマンション需要の多くは、郊外の一戸建を売って処分してきた高齢者によるものです。都心居住が進む一方で、郊外の住宅地をどうように維持するかは、非常に難しい課題ですが努力しようとしています。
現在北海道でも先程中出先生のお話にあったような議論がされております。その中でも農地のコントロールの問題が非常に大きくて、農地と市街地拡大を上手くコントロールできるかどうか正念場を迎えています。
農業地域の集落に関して言うと、都市に全部の人を集め、コンパクトにするのではなくて、集落をどう維持するかというのも大きな課題になっています。集落では学校の維持が難しくなり、廃校が増えています。廃校を防ぐためにその集落人口を貼り付け、集落をある程度維持しないといけません。学校が無くなるとコミュニティが無くなります。コミュニティが無くなると集落自体が存続しません。郵便局もそのひとつです。郵便局が無くなるとお年寄りが年金を受け取るのに非常に困ります。というように、母都市と集落をどう維持させるかが、大きな議論になっています。これはどの農村地域でも同じであると思いますけれど、端然と都市の中心に農村地域の人々を集めたら良いのかというと、それだけでは解決しません。集落が無くなると、農地が無くなります。かえってそこにスプロールされることになります。ですので、集落を守るのは農地を守ることであり、郊外地を守ることでもあるというような、ふたつが同時に動かしていかないということを今考えている状況です。
現在北海道で議論されている課題は、東北地域と同じような課題を抱えているところも多々ありますので、ぜひともこれから一緒に議論していければと思っています。
あともうひとつ付け加えて言わせて頂きますと、日本は海に囲まれたまちですので、港湾区域、臨港地区をどうするかということもまた別に考えなくてはならない課題であります。今港湾の土地利用も徐々に大規模化していまして、昔は市街地に非常に近いところにあった港が、徐々に郊外へと移っていき、港の郊外化が進んでいます。市街地に近い部分の港をどう都市的土地利用をこれから進めていくか、これは旧運輸省でもかなり議論になっているところでして、もうひとつ大きなコンパクトシティの議論だと思います。


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