岩木川でも考えてみる 
「 ダ ム の 緊 急 放 流 」と は

 
「緊急放流」がはじまると川の水量が増してきます。
より安全となる避難行動をとりましょう。
 
 (その1)から前回までに”ダムの3つの状態”と”計画や想定内の範囲でダムの運用”をみてきました。
 
 次に、計画や想定を超える洪水のときのダム運用をみてみましょう。
■ 計画や想定を超える洪水での運用は以下のとおりとなります。
      
  ① 洪水がはじまり、計画の量になるまでは(A)の状態をとります。
    (ダム水位は一定)
  ② 洪水でどんどん水量が増えダムに流れ込む量が増えると規定の放流量を放流し多
    くの洪水をため込みます。(B)の状態です。後半の放流量の増加は吹き出しの解
    説のとおりです。
    (ダム水位は上昇)
  ③ 放流量を増やし、流入量と同一になった後は(A)の状態にして、ダムの水位を
   一定に保ちます。
  ④ 下流の河川の洪水がおさまってから(C)の状態に移ります。
     (ダム水位は降下)
 
 洪水のうち、流入量と放流量の差をダムに貯留していっても計画や想定の容量に収ま
る洪水は、大きな問題になりませんが、想定を超える洪水が襲来したときには、ダムの頂上から越流してしまうという心配がでてきます。そこでダム毎に決められた異常洪水防災操作開始水位といって、この水位に達したときに各々のダムでは緊急放流に移行してダム貯水位を危険な水位に達しないようにするために操作する必要があります。
 
 
 
 ダムから放流される放流水は、グラフのとおり、(B)の状態は継続するものの、急激に放流量が増えるため緊急放流により河川へ流れ下る洪水は増量することになります。
 ですので、緊急放流がある河川では洪水被害を受ける可能性のある箇所からより安全な場所への避難行動をとることが重要になる。ということになります。
 
 「緊急放流」は、放流量を増してダム水位の上昇を抑える操作ですが、ダムに流入する流入量を超えて(C)の状態にして)放流しているものでないため、ダムの無い”原始河川の状態に近づけている”とも言える運用です。
 注:ダム決壊の予兆がみられた際は(C)の状態も取られる可能性があります。
 
 各ダムは、建設の完成直後に「試験湛水」といって決められた高さまでの貯水を試験的に貯めてダムが壊れないことを確認しています。「緊急放流が下流住民を危険な状況にしている。」といった非難のご意見もありますが、この確認された水位以上に貯水してダムの決壊を生じさせるような危険性を増すことのほうが、よりリスクが高まるものですので、これを回避しているということが言えます。
 余談ですが、世界には試験湛水の確認水位到達前においてダムの決壊が起こり、下流域に甚大な被害をもたらしたダムの事例があるようです。
 
 
 
  ■ 流入量だけに着目したグラフ
 
 
  「緊急放流」は、放流量を増してダム水位の上昇を抑える操作ですが、ダムに流入する流入量を超えて((C)の状態にして)放流しているものでないため、ダムの無い”原始河川の状態に近づけている”とも言える運用です。
 注:ダム決壊の予兆がみられた際は(C)の状態も取られる可能性があります。
 
 以上、「ダムの緊急放流」について解説してきました。
 昨今、降雨の状況が変化し、より強い雨・多量な降雨が襲来する機会は増えていくとされています。藤崎出張所の管轄の岩木川上流に浅瀬石川ダムがあり、津軽ダムも完成して、治水安全度が上がったことは事実としてありますが、両ダムが緊急放流をする可能性は無いとは言うことができません。
 地域のみなさんには、洪水被害が予想される時には改めて”早め早めの避難行動をとっていただく”ことをお願いしたいと考えるところです。
 
2019.10.29執筆 出張所長 中野 
 
 
 
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