中和処理施設について 玉川ダム全景
玉川酸性水中和処理施設のあゆみ
建設から完成まで

● 昭和43年      湯沢工事事務所酸性水調査開始

● 昭和44年      玉川毒水排除対策推進委員会設立

● 昭和47年      秋田県による簡易石灰石中和開始

● 昭和48年 4月   玉川水質汚濁対策各省連絡会議(5省庁会議)の発足

● 昭和50年 4月   玉川ダム工事事務所による調査開始

● 昭和50年10月   玉川毒水対策技術検討委員会の答申が出される

             玉川酸性水中和処理のための現地実験開始

● 昭和63年 3月   玉川酸性水中和処理施設の建設着工

● 平成 元年10月   玉川酸性水中和処理施設試験運転開始

● 平成 3年 4月   本運転開始

玉川毒水(酸性水)の歴史

 玉川の上流部にある玉川温泉の大噴から流れ出す強酸性泉は、玉川の水を酸性に変え、中和処理施設の運転開始前には、玉川ダム地点でのpHは土木構造物に影響を及ぼさない限界とされるpH4.0を下回り、農業用水の取水地点である神代ダムの下流地点でも農業用水基準のpH6.0~7.5が確保されない状況でした。  このため、河川工作物や農業生産は大きな被害を受け、田沢湖も酸性化が進み魚の住めない死の湖となっていました。この被害を軽減するため、古来より様々な対策が試みられてきました。 (1)最初に行われた対策は、今から約160年前(1841~1852年)に秋田藩主・佐竹公の命により、角館の藩士・田口幸右エ門父子(たぐちこうえもんおやこ)およびその家来・平鹿藤五郎(ひらかとうごろう)による毒水排除工事です。  明治以降は断続的に秋田県等により対策が試みられましたが、いずれも十分成功するまでには至りませんでした。 (2)その後、昭和9年に三浦彦次郎博士により地下溶透法による対策が行われ、ある程度効果がありました。この効果と併せ、昭和14年には、電源開発と農業の振興を目的とした「玉川河水統制計画」が策定され、玉川の水を田沢湖へ導入し希釈する方法が実施されました。(玉川河水の田沢湖導水開始は昭和15年)  この方法による酸性水対策は、秋田県と東北電力により継続して実施され、当初は一定の効果をあげたものの、田沢湖の酸性化等により玉川の水質も年々低下してきました。 (3)このため、昭和47年より秋田県において東北電力の協力を得て野積みの石灰石に酸性水を散水し、中和させる簡易石灰石中和法により対策を行っていました。 (4)しかしながら、これでも十分な対策とは言い難く、地元および秋田県より国に抜本的な対策の強い要望が出されました。この要望を受けて5省庁(農林、通産、自治、環境、建設)により検討委員会が開かれ、当時ダムを建設中であった旧建設省が、酸性水がコンクリートダムに与える影響が大きいことから、玉川ダム事業の一環として、玉川酸性水対策に取り組むことになりました。  現在では先人たちの様々な対策の苦労により、水質も徐々に改善に向かっており、田沢湖ではウグイ等も生息してきています。

先人たちの玉川毒水対策
(1)毒水排除工事(1841年~)

毒水排除工事  昔は降った雨が地中にもぐり、噴泉が酸性水(毒水)として出てくると考えられたため、地下に降った雨が地中にもぐり込まないように、水路を作りました

(2)地下溶透法(昭和14年~)

毒水排除工事  井戸を掘って酸性水を注入し、地下で粘土・岩石類と接触することで科学的に中和させようとする方法。  除毒された水が地下水となって渋黒川に放流されました。あわせて田沢湖導入も始まりました。

(3)簡易石灰中和方法(昭和47年~)

毒水排除工事  様々な研究・調査の結果、石灰石は酸性水と接触するとその酸性を弱める性質があることが判明。  酸性水をパイプで野外に積んだ石灰石に散水して中和させて渋黒川へ放流しました。

(4)粒状石灰中和方式(現在)

毒水排除工事  粒状の石灰石が大量に詰まった中和反応槽に酸性水を流入させて中和する方法。  直径5~20ミリメートルの石灰石をコーン型反応槽に入れ、その反応槽の下から温泉水を流入させ中和する(すべて自然の落差で行っている)  この方法でpH1.1~1.3あったものをpH3.5以上と酸性を弱めてから川に放流する。中和に使用されている石灰石は、主成分が炭酸カルシウムで、温泉水に含まれる塩酸と反応すると溶けてなくなります。反応槽の石灰石はある程度減るとベルトコンベアで自動的に補充される。一日の石灰石の使用量は約40トンです。

源泉(大噴(おおぶけ))

 源泉(大噴(おおぶけ))からは、今でも毎分8400リットル、温度97℃、pH1.1の強酸性のお湯が自噴している。 毒水排除工事

下流への効果
水質環境の改善

 藩政以来の悲願であった玉川の水質改善と、電源開発・農地開発の目的で玉川の水を田沢湖に導く玉川河水導水(昭和15年完成)以来、水質悪化した田沢湖の水質回復を図ることができます。

かんがい

 水質の改善により次の効果が得られます。 1.土壌改善用消石灰等の節減   玉川の酸性水の影響がある下流かんがい地区において、土壌を中和するために使用されている消石灰・よう燐の節減と、これに要する労力節減を図ることができます。 2.水質改善による増収   いままで酸性土壌であった地区について増収を図ることができます。

発電

 水質改善により、玉川流域の各発電所の酸害を軽減することができます。

下流のpH値

各ポイントのpHは、以下の通りです 各地のph

平成20年 各地点pH

玉川温泉 大噴  pH1.2 玉川ダム     pH4.9 田沢湖      pH5.2 神代ダム     pH6.3 長野大橋     pH6.9 H20年 平均pH(秋田県調べ)

玉川酸性水中和処理事業の効果について

pdfファイルで開きます➡中和処理施設の効果