東北地方の地方都市における「コンパクトシティ」とは何か/「コンパクトシティ」実現に向けた方策は、どんなものか
北原先生

はい、ありがとうございました。

先ほどの鈴木先生の講演で披露されたコンパクトシティの本で、ひとつ模範的な事例が出ております。全国の県庁所在地の中で、1人あたりの自動車の排気ガスの排出量が最も多い都市が山口市なのですが、山口市は県庁所在地で唯一線引きを持ってない街でもあります。県庁は、線引きをしましょうと言っているのですが、人口が下関により少ない山口としては、どんどん郊外に人に住んでもらいたいということで、全く耳を貸さない状態です。今回、隣の防府市との合併騒ぎがあり、線引きを持っているところと合併するということで、もめているのですが、水は高きところから低きところに流れるという話があって、全部はずすのではないかという話があります。ですが、先ほどの排気ガスの環境問題の話から言うと、線引きがいかに効果的かという話は、実はその数字に表れていると本にも書かれておりました。

農業との問題の線引き、それから参加のコミュニティもコンパクトシティのキーワードであること、先ほど山形市さんがおっしゃった、まちなかにつくればいいということではなく、行く場所がないのではないかという意味での公共施設の再配置、そして6章のサステイナブル・シティの中に書いてある歴史的環境をどう活かすか、その4点が鶴岡市さんの話から明らかになったと思います。ありがとうございました。

それでは福島県さん、お願いします。

福島県

福島県の最近のトピックスを、若干ですがご紹介させて頂きます。

福島県では、広域まちづくり検討会という会議を開催しているところです。この会議では、郊外の大型店の問題と広域的なまちづくりのあり方について、これから福島県がどういった方向に向かうべきか、また県のみならず、まちづくりの主体である市町村さんと、どういった形で考え方や理念を共有していくか、現在議論を重ねています。まちづくりの観点から郊外の大型店を捉えるということで、まちづくり三法のくくりの中で、都市計画を主管する我々土木部と、中心市街地活性化法と、大規模小売店立地法を所管する商工労働部で協働作業しています。今後は、基本的にコンパクトなまちづくりの考え方のもとに、例えば、都市はもうこれ以上拡散させないなどの考え方や、中心市街地衰退と活性化の観点から、昨今の郊外大型店の問題をどのように整理していくのか検討しているところです。また、大型店はいわゆる迷惑施設とは異なっているため、住民方々との意識の共有も大きな課題となっており、いわゆる生活者の利益の観点からも議論しております。

都市計画に関しては、平成 12 年の法改正の中で、郊外の大型店等にかかるメニューが用意されました。例えば特定用途制限地域などですが、個々の都市計画の中で、そういったものが上手く活用されているのかどうか、法の運用や実態についても検証して行きたいと考えております。また、今後まちづくりのひとつの手法である都市計画が、どうあるべきなのか、都市計画運用指針などを参考に検討していかなければと考えております。

現状として、一番大きな問題として感じているのは、都市計画だけでなく、農振法などのいわゆる土地利用関係5法と国土利用計画が上手くリンクしていないのではないかということと、市町村ベースで見た場合は、市町村の総合計画や中心市街地活性化基本計画、都市計画マスタープランなど相互にズレが見られたり、連携されていない場合があるということです。一つの自治体として、各種計画を有機的に束ね、相互に連携し、その中でコンパクトシティの理念的なもの、いわゆるまちづくりのベクトルのようなものをきちんと整理すると、都市計画やまちづくりがより実効性のあるものへと発展していくのではないかと考えております。

いろいろ他県さんの事例も研究していますが、国土利用計画法と都市計画法を持っている、あるいは中心市街地活性化法を持っているなど、ひとつのセクションでまちづくりに係る関係法を持っているところは、上手く機能している傾向が見られるように思います。縦割りから横の連携へということで、福島県も今年度からF.F.制度という組織改革のもと、部局間を越えていろいろな取り組みを始めております。そういった連携を、県のみならず市町村さんと、あるいは行政と民間との連携、こういったことを柱に、中心市街地の衰退やスプロール化の一因と言われる大型店の問題について、次年度以降も検討していく状況にございます。

北原先生

はい、ありがとうございました。

別な観点でお聞きしたいのですが、県マスをつくっていくときに、県全体としてこのコンパクトシティのようなイメージを意識された表現、例えば他の県ですと、線引きしているところはできるだけ続けていこうとか、拡大戦略をできるだけ抑えるような書き方を基本構想で持つやり方もあるのですが、福島県さんの場合は、どういった形でやられるのですか。

福島県 福島県につきましては、線引きについては、基本的に一部を除き現状維持ということで動いております。
北原先生

分かりました。

では福島市さんの方で、まちなかの集合住宅の現状や、いまどんなことに頭を悩ませているのかなどの、話題提供をお願いいたします。

福島市

福島市では、コンパクトシティという言葉に対して、ある意味非常に理念的だと現段階では捉えており、コンパクトシティをつくるという目標を掲げて、体系的に施策を執行しているという形にはなっていません。ひとつひとつの施策内容が、コンパクトなまちづくりに繋がるような方向性でやっているつもりではありますが、それがいわゆるコンパクトシティにはまだなっていない状態です。これからどうするかについては、身の丈に合ったまちづくりをしていく方向で考えています。

中心市街地のマンションの建設ですが、福島市では平成 14 年度から借り上げ市営住宅制度を導入し、中心市街地活性化基本計画の区域の中について公募し、条件に合っているものを認定していくということで、今のところ 4 棟ほど認定し、借り上げ市営住宅を進めています。それから民間のマンション建設が、この 2 〜 3 年かなり増えてきているという実感はあります。そのためかどうかは分からないのですが、中心部の人口がこの 1 〜 2 年下げ止まりと言いますか、どちらかというと少しずつ増えつつあるような傾向になっています。

北原先生

ありがとうございました。

そうやって住んだ方々が行く公共施設がないという話を、さっき鈴木先生がおっしゃっておりましたが、その辺りはどういった状態なのでしょうか。

福島市

確かにそういう部分もあります。中心部の青くなった、減った所に人を戻すか戻さないかということが主目的ではありませんが、それは重要なことだと考えております。人間が住む場所なので、コミュニティ的なものが形づくられないと、鈴木先生の講演の中で1世代限りというのがありましたが、次の世代も住んでいくということから、人間づきあいがそこで成立するかが鍵だと思います。そういう意味では、マンションが一概にいいか悪いか、これはなかなか難しいと思います。


前へ 次へ プログラムへ