第6回コンパクトシ ティ研究会 事例紹介2

福島県商業まち づくり推進条例について
福島県商工労働部商業まちづくりグループ 松崎 孝一 主査

 福島県商工労働部商業まちづくりグループの松崎と申します。私の方から、福島県商業まちづくり推進条例について説明させていただきま す。

 はじめに福島県の政策理念について説明します。本県では持続可能な共生社会の実現を政策理念として掲げています。持続可能な共生社会 とは何かというと、『一人一人「個」として、尊厳を認め合って支え合うことによって人間が人間らしく生きられる社会』としています。そして地球環境や未来 世代にも配慮した社会的、経済的、環境的に持続可能な共同体として、「5つの共生」(「自然との共生」、「世代間の共生」、「人と人との共生」、「地域間 の共生」、「価値観の共生」)を掲げています。これら5つの共生に基づく持続可能な共生社会を実現していくことが政策の理念ということです。

次に、条例制定について説明します。条例は、平成17年10月に制定され、平成18年10月1日に全面施行されています。制定の背景 は、先程からお話があるように、今まで経験しなかったような人口減少と急速な高齢化の進行、それから中心市街地の衰退、小売商業施設の郊外への立地などに より都市機能の格差に歯止めがかからないこと、また小売商業施設の大規模化ということがあります。

■福島県における高齢化の推移と将来人口の推移
 これらの要因について参考資料の6ページをご覧下さい。まず人口減少と急速な高齢化ということで、福島県の人口動態を示しました。平成10年の213万 8千人をピークに年々減少しており、この人口減少というのはもう歯止めがかからず確実に到来するということです。また高齢化についても、65歳以上の人口 割合が、本県では全国を上回っており、今後も増加していきます。

■大型店の出店状況
 次に、7ページをご覧下さい。小売商業施設の郊外への立地について、本県の大店立地法に基づく届出件数をベースに表にしたものですが、もうほとんどが中 心市街地以外に立地していることが分かります。商業施設が立地する前の土地利用は農地が一番多く、次に工業団地とか工場跡地などが非常に多くなっていると いう状況です。

 8ページをご覧ください。小売商業施設の大規模化についてですが、国の商業統計調査を集計した資料です。上の方が福島県内10市の小 売業の推移、下の方が県全体の小売業の推移です。大体同じ傾向ですが、売り場面積は増加しています。一方、販売額は平成14年をピークに減少している状況 が見られます。先日も日本チェーンストア協会が、小売業の販売額の統計を発表しましたが、その中でも、売り場面積はどんどん大きくなっているということで した。それに反して販売額、また従業員数は、減少の一途をたどっているという状況です。

 こういった背景の中で、平成10年に大店立地法や中心市街地活性化法など、いわゆるまちづくり三法ができました。しかしそれだけで は、なかなか目標を達成できない状況で、やはり市町村のまちづくりに、様々な影響、課題が生じておりました。そこで、県として大規模な小売商業施設の立地 について、広域の見地から調整する必要があるだろうということで、この条例を制定するに至りました。

 3番目は、県づくりの5つの基本的な考え方についてご説明します。「歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり」、「環境への負荷の少な い持続可能なまちづくり」、「7つの生活圏構想に基づくまちづくり」、「多様な主体による連携・協働のまちづくり」、「県と市町村の役割分担を踏まえたま ちづくり」、この5つの基本的な考え方に基づいて県づくりを進めていこうと考えています。

■福島県の「7つの生活圏」
 まず「7つの生活圏」について、資料の9ページをご覧ください。福島県は非常に県土が広いので、県の中央部、中通りを「県北地域」、「県中地域」、「県 南地域」の3つの地域に、そして海沿い、浜通りを「相双地域」と「いわき」の二地域に、さらに山沿いを「会津地域」と「南会津地域」の2つの地域に区分 し、7つの生活圏と呼んでいます。そして、それぞれの生活圏に基づいて政策を遂行しています。

■商業まちづくりを実現するための基本的な方向
 2ページをご覧下さい。商業まちづくりを実現するための基本的な方向についてご説明いたします。この「商業まちづくり」とは、持続可能な歩いて暮らせる まちづくりの推進と調和した小売商業施設の立地を目指す、こういったことを「商業まちづくり」と呼んでいます。基本的な方向の1つ目は、生活圏ごとに都市 機能等が集積されている地域に「特定小売商業施設」(これは条例上の言葉で売り場面積6千m2以上の小売商業施設)を集積していこ うということです。2つ目として、6千m2未満の小売商業施設については、それぞれ身近なところで買えるような適正な配置を推進し ていこうということです。3つ目としては、郊外における特定小売商業施設の立地の抑制です。4つ目としては、特定小売商業施設と地域との共存共栄のまちづ くりです。これは「地域貢献活動」を条例で規定しており、特定小売商業施設については、地域と共存共栄のまちづくりの促進を図るという観点から、地域貢献 活動を推進しています。5つ目、商業まちづくりにおける市町村と県の役割についてご説明いたします。まちづくりは住民に最も身近な自治体である市町村が住 民との協働によって推進するものであって、県は市町村のまちづくりを支援するというスタンスです。市町村の役割としては、まず商業まちづくりに関する基本 的な方向の明示です。これは商業まちづくり基本構想の策定を条例で規定しています。一方、県の役割は、商業まちづくりの基本的な方向を明示するということ で、市町村のまちづくりの実施、促進を支援するということす。2つ目は、特定小売商業施設の立地の広域の見地からの調整、誘導及び抑制に関する地域の考え 方を提示します。3つ目として地域貢献活動を促進していく、ということです。

■特定小売商業施設の立地の広域の見地からの調整
 6番目に条例の3本の柱についてご説明いたします。ただいまご説明した県の役割が、条例の3つの柱になっていますので、それぞれの柱ごとに概要をご説明 します。
 まず3ページをご覧下さい。特定小売商業施設の立地の広域的な見地からの調整についてです。県内に特定小売商業施設の新設をしようとする場合には、県に 届出をし、事業者が関係市町村で説明会を開催します。そして関係市町村や住民から意見提出を求める、ということです。この関係市町村とは、特定小売商業施 設が立地する市町村、その立地市町村に隣接する市町村、さらにその周辺市町村、これを関係市町村と呼んでいます。周辺市町村については県の方に申請してい ただき、県がそれを認定した市町村が周辺市町村となります。また、「商業まちづくり審議会」というものがあり、その審議会に諮問して、県の基本方針との適 合等を勘案して、意見を決定し、事業者に通知します。そして、事業者からその意見に対しての対応を報告してもらいます。その対応、報告案が、県の述べた意 見を適正に反映していない、また商業まちづくりの推進に著しく支障を及ぼす恐れがあると認める時には審議会に諮り、県が必要な措置を勧告するというような 流れになっています。この勧告に従わなかったり、また報告しなかったりした場合には、その旨、事業者名を含めて公表することとなっています。

■商業まちづくり基本方針
 次に、4ページをご覧ください。「商業まちづくりの基本方針」で特定小売商業施設の立地を誘導する地域、抑制する地域の考え方を示しています。まず、基 本方針の性格ですが、県の長期総合計画等との整合性を確保して商業まちづくりの推進の基本的な方針を示しています。それから、小売商業施設の適正な配置を 推進するための基本的な方針、さらに市町村がまちづくり基本構想や商業まちづくり基本構想を策定するための指針となるものを示しています。それから、県が 条例に基づき特定小売商業施設の立地について、広域的見地から調整を行うにあたっての判断基準を示すものです。「誘導」に関する考え方は、まず7つの生活 圏でそれぞれ誘導する市町村の要件を定めています。要件は6つあります。

 要件1は、県の新長期総合計画等において商業を集積させる方針を明記していること。要件2は、中活法に規定する基本計画を定めている こと。要件3は、都市計画法に規定する用途地域のうち、商業地域、または近隣商業地域があること。要件4は、3年に一度、県で実施している消費購買動向調 査の中で、広域型商圏都市または地域型商圏都市に分類されていること。要件5は、国勢調査の人口集中地区(DID)があること。要件6は、鉄道やバスなど の公共交通機関等の結節点があり、周辺の市町村からのアクセスが容易であること。これら6つの要件を全て満たす市町村に立地を誘導することとしています。

 さらに、その市町村の中で、誘導する地域を定めています。優先順位1番は、中心市街地内の商業地域、また基本構想で定める特定小売商 業施設を誘導する地域内の商業地域です。優先順位2番目は、中心市街地の近隣商業地域、または基本構想で定める特定小売商業施設を誘導する地域内の近隣商 業地域です。これは、まず誘導する市町村の要件、それを満たした市町村の中で、かつ中心市街地内の商業地域とか近隣商業地域に、特定小売商業施設を誘導し ましょうということで考えています。

 次に、「抑制」に関する考え方です。誘導する地域以外では立地を抑制していきます。特に抑制する地域を5地域定めています。

 1つ目は市街化を抑制する地域、及び市街化の見通しが明確でない地域、そして都市計画法に規定する市街化調整区域などです。2つ目 は、集団性の高い優良な農地、農振法に規定する農用地区域などです。3つ目は、景観の優れた地域で、県の景観条例に規定する景観形成重点地域です。4つ目 は、自然環境を保全すべき地域で、自然公園法に規定する自然公園などです。5つ目は良好な水環境を保全することが特に必要な地域で、水環境保全条例に規定 する水環境保全区域です。

 資料9ページをご覧ください。この基本方針と改正都市計画法の内容を対比する表を掲載しています。対象施設は、基本方針では店舗面積 6千m2以上の小売商業施設(ただし店舗面積の算出が困難な場合は延べ床面積1万m2以上)としています。 これに対して、都市計画法等では大規模集客施設として延べ床面積1万m2を越える店舗、飲食店、映画館、遊技場といった集客施設に なっています。誘導する地域は、基本方針では誘導する市町村・誘導する地域を定めています。都市計画法等では商業、近隣、準工業地域です。抑制する地域に ついては、1番から5番まであります。都市計画法等ではここに書いてある通りです。これだけで見ると、本県の場合はより誘導する地域を絞っているというよ うな状況です。

■地域貢献活動ガイドライン
 5ページをご覧ください。3つ目の柱として、「地域貢献活動」を特定小売商業施設の設置者に求めています。地域貢献活動を条例に規定した理由は、近年、 企業の社会的責任を重視した経営が求められていることからです。特に小売業については、地域密着型の産業として消費者である地域住民と直接の接点を有する という特性があります。特に、規模の大きな小売商業施設は、地域に期待される役割も大きく、また立地によるまちづくりへの影響が大きいことから、地域との 共存共栄のまちづくりを促進していく必要があると考えております。そのため、地域の声を聞きながら、その地域が行っているまちづくりの推進に寄与する活動 に参画していただきたいということです。

 なお、これは毎年度、年度ごとに実施し、計画が終了した後には実施状況の報告を受け、県はそれを公表しています。この地域貢献活動に ついては、条例が平成18年10月1日施行なので、その時点で県内にある特定小売商業施設から地域貢献活動を提出して頂きました。56施設全ての施設から 提出していただいており、県のホームページで公表しています。地域貢献活動の提出にあたっては、県としてガイドラインを策定しました。5ページにガイドラ インの主要な項目を12項目あげています。実際は活動内容として、もう少し細かいものがあり大体全部で60ぐらいの活動内容が掲載されています。

 非常に簡単ではございますが、以上で条例の説明を終わらせていただきます。



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