「福島県商業まちづくり推進条例について」 モデレータ:北原 啓司(弘前大学教授)
仙台市

商圏の広域的な影響で考えると、抑制する店舗規模については延べ床で1万m2以上、店舗面積で6千 m2以上というのは少し大きいのではないかといった実感があります。

都道府県で広域的な調整をするレベルで考えれば1万m2という規模が妥当かもしれませんが、都市計 画法が3千〜1万m2という非常に幅の広い規制となっている中で、もう少し小刻みに規制を行っていくような市町村が県内にあるのか どうか、あるいは、福島県のスタンスとして、その辺のところをどのように考えているかなどを教えてください。

福島県

今の質問ですが、この条例は大型店をただ抑えるようなイメージで捉えられますが、あくまで小売商業施設の適正な配置をして いこうというものです。要は、県が基本方針をつくり、ある程度広域的な目で見て、市町村は域内に商業機能をどう配置するかを考える。そういったものを一緒 にやって初めて、その条例の目指すまちづくりを進めることができるということです。6,000m2未満の店舗はどうするかというの は、市町村の基本構想で適正な配置を考えていただきたいと考えています。

条例上では、市町村が基本構想をつくる時にも、そういう課題は多分出てくると思いますが、お互いが共存できるような形で単 独又は共同で基本構想をつくることとしており、条例はあくまで市町村のまちづくりを支援するというスタンスで策定しています。

仙台市

関連して同じような質問ですが、6千m2という店舗面積、床面積を設定した時の基準をお聞きしたい のと、もう一点、先程実績が57件あるということでしたが、その内訳が県内スーパーなのか、県外資本のスーパーなのかなど、どういったものが特定商業施設 になっていますか。

福島県

まず6千m2の話ですが、店舗面積と集客範囲については一定の相関関係があると考えます。この条例 は「歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり」、「環境への負荷の少ない持続可能なまちづくり」等といった県づくりの基本的な考え方に基づき、広域の行政主 体である県が、特に規模の大きい小売商業施設の適正な配置を推進することを目的としています。このことから、条例の対象となる小売商業施設は、広域の観 点、県と市町村の役割分担、まちづくりの観点の3つの観点から総合的に判断し6千m2としました。

次に店舗の資本構成は基本的には色々です。小売店舗だけはなく地権者やメーカーなど様々です。特に県外資本だけということ はありません。

ホームページで全部のリストがご覧になれます。

青森市

今回の青森市は、まちづくり三法の施行に間に合うよう取り組み、大型店出店をなんとか防ぎきった感じですが、実際、他の都 市では今駆け込みラッシュだと思います。北関東辺りでは駆け込みがあまりに多くて、中心市街地の出店面積の倍ぐらいの駆け込みがあり、もはやどうしようも ないといった話もあるようです。

ところで、現在、大型店舗の駆け込み出店が福島県内にあるのかどうかということと、この条例しかない状況で、その駆け込み が防ぎきれているのかどうかというところを教えて下さい。

福島県

まず駆け込み出店案件ですが、2件ほどありました。条例には経過措置があり、都市計画法の開発許可や農地転用の許可など、 事前の協議が全て終わった後に正式な申請を出すだけのような案件は、県としても経過措置を適用しようと考えていました。ところが事前協議を終わらないうち にこういった申請を行った事業者が2社あり、結果的に条例の届け出の対象外となりましたが、県としては遺憾と考えています。

鈴木先生

商業まちづくり条例に関わらせてもらい、改めて都道府県の役割が大きいことを福島県で学びました。

青森市と福島県について事例紹介してもらいましたが、その違いは何かというと、一方は市でもう一方は県だということです。 全国的に、市町村単位で中心市街地活性化基本計画などの取り組みはありますが、その前提になるような広域調整がすごく重要ではないかと思っています。

平成の大合併では、異なった自治体行政が、一本化したために温度差の違いをどうやって調整するか、あるいは求心力をどう高 めるかが大きな課題になっています。一方で、合併をしないところは自立を目指すため、農業では難しいので大型店を誘致する。福島県の例を言うと、大型店は 農地を1ha700万円ぐらいで借りてくれますが、米を作ると140万前後です。こういう中で、ここの広域調整をどうするかというのが今、全国で起きてい る問題です。

実は、国土利用計画を担当している部局で、農村部の土地利用条例の策定準備を進めています。例えば、長野県旧穂高町では農 村部までも含めた土地利用に関する条例が存在します。福島県ではその条例についてかなり勉強をし、もう少し本格的な条例づくりを進めていているところで す。ある町では今年度中にもう完成して、これを全県下で進めていく予定です。

今回のこうした取り組みは、広域調整と同時に、都市と農村をどう連携させるかというのがすごく重要な課題だと思っていま す。結果として、商業まちづくり推進条例になりましたが、私達が狙っていたのは福島県土の中で、都市と農村でバランスのある土地利用計画を行わないと、農 村部は悲惨を極めるということです。

また、この条例を発足させてから新しい課題が見えてきました。先程ありましたが、農村部が切り捨てになるのではないかとい う議論は今でもたくさん出てきます。しかし、福島県は7つの生活圏というものを形成してきており、7つの生活圏ごとに賑わいをつくるためにはどうしたらい いかというと、やっぱり地域に理解をしていただかないといけないということになり、公共交通システム、アクセスが大事になる。

福島県では過疎バスを運営するために7億円の支援をしています。それと同じぐらいの金額を、全県の市町村が支援をしていま す。総計10数億のお金で過疎バスの運行を支援していますが、実態は効率の悪いことをやっており、これからこのような話も考えていかないといけない。

また、地方はそのほとんどで東京貫流型の経済が展開されており、確実にそのことが進行しています。そのなかで、地方都市は どうすればいいのか、様々な研究会で地域循環型の地域経済システムについて検討しています。

このことについては、日本商工会議所でもそういう方針を出しつつあります。

北原先生

ありがとうございました。商業まちづくりの話と都市計画領域の話と併せた形での広域調整、様々な取り組みの一端をお話いた だきました。

一つだけ、私からの質問ですが、商業まちづくり条例をうまく適用させていくにあたり、農政サイドがどういった援護射撃がで きるのかについてはどのようにお考えでしょうか。

福島県

鈴木先生がおっしゃるような内容については現時点では具体的なアクションは行っていないと思います。この商業まちづくり基 本方針を議論する中でも同じような意見を頂きましたが、その時もその場ではあくまで商業機能をどう置くかというだけの話でしか議論できないということで結 論には至りませんでした。

もちろん、立地調整などの条例の運用に関しては、必ず農政サイドと情報交換しながらやっております。あとは本当に農業振興、過疎地域の振興を今後商業まち づくりといかに並行して進めていくかが課題になると思います。
北原先生

福島県の取り組みに関して他に何かご質問等ありますか。

山形県

今回の小委員会の中間取りまとめ案の中で、中山間地域も含めた田園地域の振興が課題として挙げられていますが、過疎、中山 間地域まで含めて都市政策がどのように関わっていくのかをお聞きしたいと思います。

福島県

福島県の場合は、都市地域と田園地域などが、地形的に一体化している部分が多いということがありますので、今まで少し目が 向いてなかった、いわゆる郊外部の土地利用のあり方やメリハリをつけることについても、都市計画サイドの方で積極的に考えていこうと議論しているところで す。

北原先生

はい、ありがとうございました。他によろしいでしょうか。
まちづくり三法も改正され、まさにこれからはあらゆる分野が全て一緒に動いていかなければなりません。しかも市町村合併もあり、仕組みが変わってすぐ動け ないというジレンマがありながらも、いつもに比べて具体的な話が出てきました。これから、このコンパクトシティ研究会も少しリアルな話をしていく場面がき たのかなという気がしています。今後どういう形で進めていくか、これから少しその進め方に関してもまた議論していきたいと思います。

今日は福島県と青森市には、本当に貴重な時間をいただきましてありがとうございました。これからもこういう形で幾つかの自治体の取り組み、あるいは今困っ ていることなどを共有しながら、東北として、本当の意味でのコンパクトシティを進めていく議論を続けていきたいと思いますのでこれからもご協力よろしくお 願いいたします。

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