「福島県商業まちづくり推進条例について」 モデレータ:北原 啓司(弘前大学教授)
情報提供
福島県土木部
都市計画グループ

「新しい時代に対応した都市政策」策定専門小委員会について

商工労働の担当の方では、特定小売商業施設の扱いなど商業施設に特化した施策を行っておりますが、都市計画の担当の方では、都市政策という観点で、より広域的な範囲で考え方を整理しています。

この専門小委員会は、県の都市計画審議会の専門的な検討組織ということで、5月25日に立ち上げ、まちづくり三法の改正、商業まちづくり条例などを踏まえて、これからの福島県の都市政策はいかにあるべきかについて議論をしています。本日お越しの鈴木浩先生からもご指導をいただいており、最終的には、福島県としての都市計画制度の運用方針について市町村と一緒に基本的な方向性を整理したいと考えております。その上で、都市計画法の制度運用について実効性を高めていきたいと考えています。現時点では、前段として、都市政策の基本的な方向性を確認しているところです。

■専門小委員会のスケジュール等
2番のスケジュールをご覧ください。福島県では平成16年度に33都市計画区域について区域マスタープランを作成したところですが、三法改正あるいは商業まちづくり条例ができたことも踏まえて、都市政策シンポジウムを開催したところです。その中で、都市計画審議会である程度しっかり議論する必要があるということになり、この専門小委員会を設置しました。

平成18年度は専門小委員会を5回ほど開催し、1月24日に中間とりまとめの案を提示するに至ったところです。新たな都市政策の方向性が固まってきたので、県の都市計画審議会の方に諮問し、パブリックコメント等を行いながら、来年度引き続き検討していきたいと考えております。

■専門小委員会の提言(中間とりまとめ)案の概要
中間とりまとめの案の概要をご覧ください。例えば、福島県の地形的特性を総括すると、市街地と田園地域がつながっています。区域区分の線とか都市計画区域の線というのは、図面上の線でしかなく、地形的には一体であるというところです。そのような地形的特性の中で、福島県のコンパクトなまちづくりのあり方とはどういうものかということも議論をしてきたところです。鶴岡市さんの事例紹介にありましたように、コンパクトシティというと、いわゆる郊外の切り捨てというような誤解を招きやすい面もあり、都市地域と田園地域がどのようにして共生していくかということも議論してきたところです。

○都市づくりの基本的な考え方
都市づくりの基本的な考え方ということで、4項目ほど整理しました。一つは、「7つの生活圏」という考え方が福島県ではベースになっているので、この生活圏をベースに都市づくりを展開すべきであろうということ。また、一極集中、地域格差の抑制をしながら持続可能な共生社会の実現というのが必要であるということ。さらに、都市地域とその周辺を含めた広域的な視点からの都市づくりが必要であろうということ。最後に、当然ながら法律の趣旨、あるいは条例、まちづくり政策、それらの理念と整合した都市づくりが必要であろうということ。これら4項目を整理したところです。

○都市計画の課題
また、都市計画の課題は何かということで7項目ほど記載しておりますが、こちらは主に専門小委員会の委員の皆様からいただいた意見をまとめたものです。コンパクトな集約型都市構造を推進する必要性がある一方で、過疎、中山間あるいは田園地域の振興も必要であろうというところが、福島県の今後の都市政策を進める上で非常に重要な課題であり、より検討が必要となる部分です。

また市町村合併が一段落した中で、都市圏等がモータリゼーションによって広域化していることへの対応。あるいは、歩いて暮らせるまちづくりへの対応。また、総合的な都市交通体系として都市交通と土地利用の連携が必要であること。さらに、都市計画制度については、市町村と県の役割分担がありますので、その辺もより分かりやすく明確にする必要があるのではないかということ。最後に、当然ながら県民の参加・参画を推進する必要があるということ。こういったことを踏まえ、新たな都市政策の方向性として7項目をまとめることになりました。

○新たな都市政策の方向性
この方向性はまだ案の段階のものです。1つ目が都市地域と田園地域の共生を推進するための土地利用施策の検討ということです。この辺が今日のテーマに少し関係する部分だと思います。いわゆる非線引き都市計画区域の白地地域、あるいは市街化調整区域の土地利用区分をもっと明確にすべきではないかというような議論を踏まえて、このような案になっているところです。一方で市街化区域、あるいは非線引き都市計画区域の用途地域のように、用途地域が決定している地域においても、用途地域だけではなかなかきめ細やかに対応できていないところもあるので、地区計画あるいは特別用途地区を、これは、準工業地域に限らず積極的に活用していくべきではないかというようなことです。

2つ目が環境負荷の少ないコンパクトな都市づくりのための都市計画の活用ということです。この辺は、先程紹介した商業まちづくり条例と整合した都市計画制度の運用を今後進めていきたいというところです。その際、コンパクトシティについての誤解を招かないよう、都市地域と田園地域との共生についての観点も設けています。

3つ目が、いわゆる景観、自然環境あるいは歴史的・文化的資源と調和した、個性と魅力ある美しい都市づくりを推進するための都市計画制度の活用ということです。

4つ目が都市施設・交通施策と土地利用施策の連携の推進ということです。いわゆる土地利用と交通施策がなかなか今まで一体的に展開できていなかったという反省も踏まえまして、この辺の連携を密にするための検討をすべきではないかということです。その中では、例えば中心市街地活性化を進める一方で、過疎・中山間地域における生活公共交通の確保、こういったものも併せて展開しないと、今後の都市政策としては成り立たないであろうということも記載しているところです。

5つ目ですが、社会経済状況の変化に対応した都市計画区域等の見直し・再編ということです。県の役割としては、都市計画区域の指定、都市計画区域マスタープランの策定というのがあります。市町村合併が一段落したので、合併後の状況に対応した区域の見直し・再編、もう一つの観点が、合併に関わらず、生活圏等の広域化に対応した都市計画区域の見直しということです。福島県では、一つの都市計画区域が一市町村で完結している、いわゆる単独都市計画区域が相当ありまして、生活圏あるいは都市圏が広域化している中で、県民の生活の実態に見合った形で区域の見直し・再編を進めていくべきではないかという考え方です。その際に、福島県では「7つの生活圏」という考え方を持っているので、限りなく7つの生活圏という考え方に近づくように、都市計画区域もあるべきではないかということです。

6つ目が、都市計画における県民の参加・参画の裾野の拡大ということです。この辺も進めていかないと、総論賛成、各論反対という都市計画の現状を改革できないだろうということです。

最後に、「新しい時代に対応した都市政策」を推進するための基準等の策定ということです。このような提言は、これまで理念だけに終わってしまってきたという反省も踏まえまして、別途基準を策定すべきではないかということです。一つはこの提言自体の実効性を確保するための基準をつくること。もう一つは、都市計画法の改正にある広域調整を含むような形で、いわゆる市町村と県の協議同意基準をつくることなどがあります。以上、7つの新たな都市政策の方向性がまとまっている状況です。

まだ案という段階で、本日詳しい資料はご提供できませんが、福島県の都市計画グループのホームページで全て公開しておりますので、皆様方からも、色々とご意見を頂戴できればと思います。

北原先生

はい、ありがとうございました。福島県の場合には、商業まちづくり条例、その背景と実際の運用に関わる話、都市計画部門からは県が考える都市計画の進め方の話、他の県の方々には県の政策について興味あるでしょうし、一方で市町村の方でも興味がある部分があると思いますので、ご質問いただけたらと思います。


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