私はこのコンパクトシティ研究会で交通を考えるときの視点を2つ話したいと思っています。
1つは大きな交通計画と小さな交通計画です。この2つの考え方をコンパクトシティで考えていかないと成り立たないと思っているわけです。大きな交通計画は先程鈴木先生が言いましたけれども、全体的な道路交通網を考えた時にコンパクトなまちづくりをする時の道路のつくり方です。つまり放射状に広がっていく、そしてある目的に対して輸送量を大きく抱えてきた道路交通計画から、内部の循環をどれだけ活発化していくことで、おそらく20年前、30年前の交通の道路網とはかなり違ってくる訳です。それを30年前の計画をまだ続けていこうとして都市計画を広げていくという話をしていくということが、私は果たしてコンパクトシティの話をしている人たちの考え方と、ずれてきている街がかなりあります。弘前は戦災を受けなかったので幸いな街だと考えていますが、そこに何も気づかない人たちが中央を横断する都市計画を30年前に引いて、2年前に通ってしまって市街地を分断しました。やはりそういうことをみんなで考えていく都市交通計画の大きなもの、交通計画の転換みたいなものが地方都市には必要だろうと思います。
もう一つは小さな交通計画だと思っていまして、それが先程の中心部のオープンカフェのような歩行者空間の話につながっていて、ここで必要なのは、交通がある場所とある場所をつなげるための手段だという発想よりは、そこで物語をつくっていくための通路だと考えていかなくてはいけません。ここでこういうライフスタイルを街で味わいたいから、ここは自転車で行きたいし、ここはバスで行きたいわけでその物語をつくらずしては、方法論として車を排除するとか、バスを使うといっても目的がないものになってしまうので利用者は増えてこないのです。交通計画の転換を考えるのであれば、小さな交通計画は、街なかの小さな空間でその街なかを味わう、物語をつくっていかなくてはなりません。それに対しての交通手段がフィットしてこないというのを最近の社会実験等を見てよく思っていました。そのようなことで物語づくりを含めた小さな交通計画が必要です。そうすると循環バスではなくてシャトルバスのほうが必要かもしれません。病院のバス、シャトルバスは意味があるのだと思うのです。学校のスクールバスもそうですが、循環ではなく、一体一対応です。目的を考えていくと形態は違ってきます。これが1つです。
2つ目は、交通計画は交通政策課だけではできない問題です。それは福祉の観点を含めば福祉のお金が入ってやっていけると、木谷さんが言いました。そういう他の政策、都市計画課以外のことも関係しています。僕は仙台に勤めていた時に一番町にビルができました。そのビルに駐輪場の義務が出てヒアリングにいった時に、「公開空地の固定資産税を緩和するなら屋上につくらずに目の前のすごくいいところにきれいな楽しい公開空地の駐輪をつくってあげるのだけど」ということを某所の人が言いました。そういう空間を担保して歩行者にとって歩きやすい空間をつくる。路上を警察の許可をとってオープンタウンモールにしていく手続きをとらなくても、民間の敷地をパブリックな空間として確保することで楽しい活動の支援にできないだろうかと思います。公開空地をつくっても、容積率はそのままになっていますので、容積は使えなくなるわけです。そういう空間をもう少し育てていく発想でいかないと、実は交通計画のコンパクトな地域づくりは出てこないと思います。
一方で郊外の話があって、交通計画をしっかりするために都市計画的な観点でやっている事例、東急不動産の話をしたいと思います。東急電鉄は田園都市線をやってきてこれが今赤字になってきたのです。この理由は田園都市線の界隈につくったニュータウンの人たちが高齢化してきて、東京の中心部に通勤しなくなってしまったからです。さらに、息子たちの通学がなくなってしまう。というわけで、需要がなくなったのです。その時に東急不動産、東急電鉄はどう考えたかといいますと、東急不動産がつくってきた田園都市界隈が高齢者住宅になってしまっているニュータウンの土地をリフォームして再分譲し、これを若い世代に貸すという世界を考えたのです。そして高齢者にはそのお金をあげて街なかのマンションに移る提案をしました。そういう流通のしくみを一民間企業が考えました。これが6月の朝日新聞に大きくでたわけです。来月僕、ヒアリングに行きますが、彼はその事業は東急電鉄の死活問題であり、公共交通の問題と郊外の都市政策とそれと連動する街なか居住との交換のしくみみたいな政策が全部関わってくるので、交通だけの問題ではないと思うのです。福祉もあり、あるいは都市施設のつくり方もあります。交通計画を考える時に僕は東急が踏み切ったことはすごくチャンスだと思いました。今、都市街地調査で青森の郊外の一戸建て住宅とまちなかの交換の仕組みというものを青森市と協力してやっています。街なか居住を進めていく為にニュータウンについて決着を付けなくてはいけないわけです。切捨ては出来ないし、ニュータウンをどうやって持続させるかということがまちなか居住の一方の答えであり、その時の交通計画が非常に大きく影響してくるだろうし、人が少なくなってきたらバスの便を減らそうと市バスが絶対言ってはいけないと考えています。そのあたりが今日の僕の最終的な感想でした。 |