意見交換会:「都市交通・公共交通について」
全体総括
北原先生

これで今日の公共交通、都市交通に関する4つのテーマの話を聞いてきたわけですけれども、全体を通しての意見交換をして、今日は終わりにしたいと思います。

今日は多岐に渡って一つ公共交通といっても主体が様々なものに関わってきたり、実際的には非常に問題が辛いという話が浮き彫りにされてきたものがあるかと思うのですが、特によろしいですか?

では鈴木先生からお話をいただきたいと思います。

鈴木先生

それでは全体を通しては難しいですけれども、私が考えていることについて話をしたいと思います。今日は、コンパクトシティをつくっていく為の交通体系はどうあるべきかという議論であったと思います。それには色々な手法の積み重ねがあると思いますが、個別手法をそれぞれ横につなげていくと本当にコンパクトシティにつながっていくのだろうか、脈絡があまり良く見えないことがあります。正直言うと、私たちはどういう都市をつくりたいのかという議論がもう少し全体に必要な気がします。しかし、現実には車の問題、自転車や歩行者の問題、あるいはユニバーサルデザインやバリアフリーなどの個別の課題がたくさんあるので、その個別の課題にそれぞれ対応している、その知恵を競い合っている。それは言い過ぎかもしれませんが、そういうことが積み重ねになっているのだと思います。最終的には私たちはどういう市街地や都市をつくりたいかということが一番骨太なところで必要な議論であると、個別の事例を聞けば聞くほど私は思うのです。

私は学生時代に初めて都市計画で、金沢市にお話を伺いに行ったことがあります。その時の都市計画課長の言ったことが耳に残っているのですが、金沢は戦災を受けなかったことが災いして、戦災を受けていたら仙台市のように50m道路ができたかもしれないと、こういう変な話になるのです。しかし、今振り返ってみると金沢は先程の紹介のように戦災を受けない城下町としてやらざるを得ない、だから例えば道路を整備するという手法は限界があって、その中で考える、考えなくてはいけないところで金沢の色々な知恵と工夫が生まれてきたというところを僕は注目していいと思います。東北地方の中にも城下町の都市がたくさんあると思います。城下町の中には旧城下町を守り育てていこうという都市と、どうにもならないので市街地を別に移してしまおうと、大きくいうと二通りあります。それで今、私がそれぞれ関わっている都市があるのですが、旧市街地をほとんど捨て、新市街地をつくってきて、現在は人口減少時代を迎えています。この旧城下町がほとんどもう死に体になってしまうといった都市もあります。私はその中で都市交通のあり方をどう考えるかが本当にこれからのコンパクトシティの考え方の中では重要で、まずは都市交通問題の根底に、どういう都市にしたいのかということの議論は絶対に必要だと思うのです。

自動車交通を中心に考えてきた典型はイギリスだと思います。交通問題への対応の只中にあるかと思うのですけれども、それでも多くの都市は基本的にはリングロードを作って市街地の中に直線的に通過交通を入れない工夫をやってきました。先程金沢の事例でも環状線を3本、内・中・外ということを考えて、特に内環状は既成の道路をつないでいるという説明もありました。そういう脈絡や展望で、環状道路をつくろうという発想が東北地方の都市でどれくらい取り入れただろうかと考えます。バイパスをつくることは一般的にどこもやっています。でもそれだけで本当にいいのかというと、それは市街地、都市のつくり方をどうするかという考え方をもう一つ積み重なっていかないと都市交通や市街地の関係が生まれてきません。今、国交省の事務所レベルの方々との話し合いの中で、市街地の形態と道路の整備の仕方、それから鉄道との関係をどのように将来展望として築いていくのかということが今後の大きな課題で、その市街地の将来像と自動車交通、鉄道がある場合はそれとの関係をどのようにもっていくのかということを考えるべきだということで来年度検討しようと思っています。いずれにしても東北地方都市はほとんどの場合、都市づくりを鉄道と無関係に行ってきたのです。ニュータウンは鉄道のないところにつくっていくというのが、ニュータウンのつくり方でした。それが今衰退を迎えた時に、どうするのか、これは比較的市街地から離れているので、この都市交通、交通動線をどうするのかという課題を抱えています。ここを整理できないといけないし、コンパクトシティの議論はそのことを無視することではありませんので、郊外のニュータウンをどのように、どういう方向付けをするかということが大きな課題です。多くの場合はコンパクトシティ=郊外ニュータウンの切捨てというような誤解を招いてしまったりして、北原さんもそのことについて議論を巻き起こしているかと思います。しかし、コンパクトシティはニュータウンを切り捨てるという議論ではなく、ニュータウンをどう位置づけるのかがこれからの課題です。でもそのことも議論があんまり高まっていないと思っていて、街なか居住が話題になると、街なか居住が盛んに検討されるけれど、一方での郊外ニュータウンはどういう位置づけをするのですかという話が据え置かれています。こういう点からも都市の交通のあり方をきちんと考えなければならないなと思っています。

それからもう一つは、金沢の例で、先程聞きたいと思っていたのは、都市は金沢40数万の都市、50万未満の都市です。けれども、金沢の都市計画は周辺にたくさんの町村があっての市です。周辺の町村は、市街地の拡散を受けざるを得ないという状況にあるのです。金沢市だけではなく周辺の自治体との連携のあり方というのが広域都市計画の中でかなり重要になってきます。そうすると、わが国では一気に合併という話となりやすいのですが、都市計画の諸問題について、一部事務組合などのモニターをもっと有効に使って合併という論議だけでない選択肢をいくつか用意すべきだと思っています。そういうことを含めて、広域都市計画ネットワークのあり方を一つの自治体として考えるのではなくて、ネットワークの形成をしていかないとコンパクトシティの実りも上がらないと思います。今、まちづくり三法が根本的に見直されようとしています。昨年の12月下旬には政府や自民党の調査会などの取り組みがたくさんでて参りましたので、みなさんご承知だと思いますが、多分これからもコンパクトシティとして考える重要な議論になっていますので時間があればまた議論をしたいと思います。


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