意見交換会:「都市交通・公共交通について」
テーマ3 トランジットモール
北原先生

「八戸市都心再生にぎわいトランジットモール社会実験」

今回の社会実験の場所ですが、国道340号の中で実験をしています。

これは社会実験に取り組んだ経緯です。4月早々に、道路管理者である県、交通管理者である警察と約1ヶ月かけまして協議が整い、4月末に申請をしました。7月には、連絡協議会を地元の方々多くの関係経営者と組織を立ち上げまして、その協議会の中でさまざまな実験に取り組みをしました。それで今月の末、最終的に社会実験についての報告を協議会に対して行う予定でいますが、今日は最終ではないのですがご報告を致します。連絡協議会のメンバーは総勢30人で構成しています。地元商店街の方々、それからタクシー会社の方、関係者の方すべて入りました。

中心市街地の現状です。中心市街地の商業機能が衰退しています。通過交通が多く混雑しているような状況が見受けられます。毎月のイベントの開催にあわせ、歩行者天国を実施しているという特徴的なことがあります。4月から10月までの日曜日、月1回程度実施しています。先程の三日町、十三日町という場所で今回の実験の歩行者天国を実施しました。八戸三社大祭をはじめ、各種お祭りのメイン会場になっている特徴的な場所で社会実験を取り組みました。平常時の状況は、3車線の道路になっています。午前10時ころは、自由に車を止め、配送をしている状況が見受けられます。中心市街地における主な動きですが平成16年度から都心地区再生市民ワークショップで今回の三日町、十三日町のモール化の検討ということで平成16年度から市民の方と検討をしています。今日ご出席の北原先生には平成16年度からこのワークショップで大変お世話になっておりまして、引き続き18年度もよろしくお願いしたいと思います。それで、昨年暮れの12月にこの市民ワークショップから提言を受けています。

今回の実験の目的です。「交通環境の変化の把握」、それから「3つの実験パターンを設けておりまして、その中から八戸に合う最適なパターンを模索」、「賑わいの創出」、「オープンカフェ(会所場づくり)の設置」、という大きく4つ項目出しをしまして、実験に取り組みをしました。その中で効果的な実現可能な施策展開に繋げる。今後につきましては、実験が終わりまして今月の末に最終報告書のとりまとめをおこない、引き続き連絡協議会を開催し、その中で、段階的な次の取り組みをこの協議会、それから市民ワークショップでの検討も継続していきたいと考えています。

実験内容です。期間は9月25日(日)から30日(金)までの6日間実施いたしました。時間ですが、毎日11時から19時まで実験パターンとして実験1フルモール、これは1日だけでしたが、25日に実施しています。実験2、フルトランジットモール、これも1日だけの取り組みです。3車線の車線をそのうちの1車線をオープンカフェスペースにして、残りの2車線で走行するという、この場合規制された車はありません。通常通り走るということで、一般車も実験については走行しています。実験1、実験2とも周辺の交通渋滞の影響は全くみられないということでした。実験3−1、フルトランジットモールで、ここからは一般車が規制されています。配送トラック、タクシーの進入は可としましたが、タクシー協会では半端なことは良くないということで、実験区間には入らないという自主的な申し出がありました。中心市街地に入ってくる、そこに用事がある方を乗せてきたタクシーのみが入れる、もしくはそこに呼ばれたタクシーのみだけが入れるという取り組みをしました。それから3−2、これはバスのみが通過できるということで2日間、29日と30日に実施しています。

周知方法です。市の広報誌を使いました。一番効果的だったと思われるのが、立て看板での周知、中心市街地に19箇所、周辺1km圏内の中心市街地に入ってくる幹線道路に9箇所ほど立て看板を設置しました。大きさは丁度畳一枚分くらいのものを道路に立てまして、周知しました。その後、道路交通情報センターでのお知らせと地方紙に広告を出しました。実験に先立ちまして、この周知の方法、どの程度すれば良いのかというのが非常に担当者とすると悩んだわけなのですが、あまり周知しすぎると実験の効果がないと思い、ほどほどにすることに途中から切り替えました。また、地元警察署でも色々と協力して頂きまして、道路交通情報センターには警察からお知らせをしていただき、そちらのルートから流したということです。

調査内容ですが、定量的な調査として、自動車交通量の調査、その周辺の迂回路の交通量の調査をしています。それからバス交通調査で、バスの定時制の調査、それから対象地区内のバスの所要時間、それから歩行者の交通量調査(実験区間)をしています。それから歩行者活動調査ではオープンカフェの利用者数の調査をしています。それから路上停車数調査です。実験区間に入れない車が周辺でどの程度駐停車しているのかを調査しています。それから定性的調査ということで来街者へのアンケート調査をしました。サンプル数は380ほど集まっています。また、関係者ヒアリングとして実験を体験した方々に実施しています。

これは9月25日に実施したフルモールでの見取り図、計画図面になっています。これは地元商工会議所の方で、にぎわいストリートフェスティバルとして、この場所で様々なイベントを実施している日に実験をぶつけたという状況です。大道芸によるパフォーマンス、今回中学生における新体操の演技などを歩行者天国の中で実演しています。実験1につきましては、中心市街地での歩行者天国が恒常化していることで周辺での大きな交通混雑は見られなかったという状況でした。これが実験2で26日に実施したセミトランジットモールです。3車線のうち1車線をオープンカフェスペースにして、残りの2車線を通常通り走行しました。八戸の特徴といいますか、道路の使い方ですが、歩道側車線につきましては駐停車をする車が非常に多い状況で、普段から一般車は真ん中の車線を通り、こちらがバスの優先道路となっています。こういう住み分けが普段からできておりまして、実質3車線あるのですが、利用している車線は普段から2つしか利用していないということです。そういう利用状況でしたので実験2においても周辺に渋滞、交通混雑がみられない状況でした。これがオープンカフェの様子、実験の様子になっています。地元商店街の方々と協力しまして、ここに椅子とテーブルを11時に設置しまして、18時半には撤去することを毎日地元商店街の方々と繰り返しました。実験2につきましても通常通り周辺の交通混雑はない状況でした。

3−1これは27日28日の2日間、実施しています。ここで規制されるのは一般車のみ、ということで両側にオープンカフェスペース。それからこの図面では2箇所になっていますが、この辺には実質現場ではタクシーの乗り降り場と配送車のスペースとを確保しています。配送車の方々にとっては非常にこのスペースを確保したことが好評だったことが、後のヒアリングで出ています。これがその状況です。28日、29日になりますと、29日くらいにはオープンカフェでの利用の人がだいぶ増えたのですが、当初少なかったわけで、日増しに増えてきた状況になっています。それからこのカラーコーンと連結棒によって走行する車線とオープンカフェの部分を仕切ったような形になった訳ですが、これが非常に見栄えが悪いということで、そういう格好悪い評価、意見が非常に多かった状況です。

3−1の状況ですが、実験区間に入る二十三日町という交差点があるのですが、周辺では一般車を左右に振り分けまして、周辺での交通混雑が見られた状況になっています。

これが3−2でパターン2、バスしか走れないので、ここで一般車、それからタクシー、配送車も振り分けております。ここでの左右の車線はオープンカフェスペースで実施しました。29日、30日になりますと、実験の周知で中心市街地を通っても混雑するということが、ある程度浸透してきたわけです。周辺で交通混雑が起きておりませんでした。ただ、9月30日ということで、上期の締めの日にあたるので周辺の銀行とか、金融関係でかなりの利用する人がいるのではという情報がありました。この社会実験がどうなるのだろう、相当苦情がくるのではないのか心配したのですが、そういうこともない結果に終わったということです。これがその時の状況写真です。コーヒー屋さんで、テーブルの上にテイクアウトメニューを出すような状況です。そのような地元の方と各店舗との取り組みというのが私ども事前の根回しというのが十分に行き届いていなくて、各個店の方で工夫をした状況になりました。この方が徐行ということで急遽、看板を持ってここに立っています。バスしか通らないものですから、バスの運転手がここを飛ばして走っていったので危険な状況が発生しました。急遽徐行ということで思いもよらない状況になっています。29日30日になりますと、このオープンカフェの利用数も相当増えてきています。後は、タクシーを利用する方が割と多いので、お年寄りの方は、タクシーが入ってこないにもかかわらず、普段待っているデパートの前でしばらく待っていたことがありました。タクシーの需要が非常に多いなと思っております。

それから実験結果の概要です。交通規制に伴う交通混雑の状況ですが、実験1、2とも大きな混雑はない状況でした。実験3、特に、3−1は、その日から一般車が規制されたこともありまして、周辺では混雑が出たという状況になります。オープンカフェの利用状況ですが、なかなか座っていただけない状況で、なんでこんなところに座っていかなくてはならないという苦情もありました。1時間ごとの計測では9月26日は28人、28日は92人、29日は114人ということで日増しにこのオープンカフェの利用が増えていきました。地域柄慣れていない、恥ずかしいということが前面に出まして、なかなか利用していただけないという状況でした。それから来街者の満足度ということでトランジットモールが活性化に役立つという評価が、役立たないという評価を上回っていました。それから歩行空間やバスの利便性は良くなったという評価が多く寄せられています。後は当然ですが、自動車の利便性、周辺道路の交通環境について悪化したという評価です。商業環境への影響ですが、実験3からは一般車が入れないので買い物客の方が道路に駐停車しまして、店先まで車で来られないので、商売としてはマイナス影響があったという声が多い状況でした。しかし、今回の実験については非常に有意義な取り組みであるとそういう評価をいただいています。今後は改善を図りながらいうことになりますが、様々な課題が今回の実験で出ましたので段階的に取り組んでいきたいと思っています。それから買い物客の方が店先まで車で来て買い物をしているのは、私どもから言わせてもらえば、商店街の方が、黙認しているということです。商店街のありかたということでルールづくりが必要ではないのかと考えています。それから専用の荷捌き所がほとんどのお店は持っていない状況であるということで、その場所も検討しなくてはならないだろうということも提案していきたいと思っています。それから、バスの走行環境への影響ですが、スピードを出すくらいでしたので、バスの運転手からは非常に好評でした。配送トラックへの影響ですが、実験3−1で実施いたしましたスペースの確保が非常に使い勝手がいいということで、普段駆け足で配送しているのが、ゆったりと配送している姿も見られて使い勝手がよかったということの評価を受けております。それから実験が11時から19時まででしたので、11時前に配送を終わらせたという工夫も見られています。配送基地などによる集配システムの検討を中心市街地で考えていかなければならないと思っています。それからタクシーへの影響ですが、実験中利用客の方を拾えなかったと非常にマイナスになったという結果です。タクシーの影響がかなり大きかった、逆のことを言うと、タクシーを利用する人が相当数いるということがこれで分かりました。それから中心市街地には、専用のタクシー乗り場がありません。これはタクシー協会の方で今後詰めていきたいと思っておりまして、具体的にタクシー協会の方に提案していきたいと思っています。

まとめですが、今回の社会実験におきましてアンケートによる調査を実施したのですが、実施日を限定する、月1回や毎週日曜日などの取り組みであったら非常に現実性があるのではないかということで、実施日の限定、定期化するなど段階的な取り組みであったらいいのではないかという意見をいただいています。それからタクシー利用者が非常に多いというのでトランジットの機能として公共交通のバスだけでなくてタクシーということを交通手段の検討の中に加えるべきでないかと思っています。それから八戸市の課題として、ソフト、ハード両方から周辺道路の整備をはじめていかなくてはならないと思っています。先程の市民ワークショップの方からの提言を受けたということで、少しお話をしましたが、周辺道路についてソフト的な提言を市民ワークショップからあって、交通規制、一方通行をすることによって周辺の渋滞がある程度解消されるのではないかという提言がありますので、是非それを生かし、段階的に取り組んでいきたいと思っています。それから、専用の荷捌きスペースを保有していない状況にあるので、各商店、その配送会社の方と今後の配送システムなどを含めて検討が必要と思っています。以上で終ります。

北原先生

はい、ありがとうございました。トランジットモールに付随する屋外の取り組みは、様々な地域でモデル調査、社会実験をおこなっていると思います。今の内容、あるいは自分たちがやっているようなことを含めたことでご意見とか、感想、質問があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

社会実験の時に、タクシー協会にはどうだろうかとか、交通面にはどういう影響をあたえたかと影響度の話が必ず出てきます。しかし、社会実験をやったことによってどのような街なか物語、暮らしが、つくれたという実験の結果についてのアウトプットが実はほとんど出てこないのですね。つまり交通量にどういう影響を与え、与えなければやってもいいだろうと。そうではなく、このようなものをつくった時に、どこでバスに乗り降りして、街なかでどういう時間を過ごすといったことを交通規制によりトランジットモールにしたことで、今までなかったような街なかでの暮らしの時間がつくられるのであれば、そのことが契機になって街なかにいる時間が長くなるとか、活性化につながっていくという話が出るかと思うのです。トランジットモールや社会実験をうちの学生に調査をさせていまして、木谷さんを頼って、その学生を連れて金沢のオープンカフェを見にいきました。その後、静岡に行ったのですが、金沢のオープンカフェは路上に傘が置いていただけで、雨の日に行ったものですから、結局何もできませんでした。それでいいのだろうかと僕はすごく感じたわけで、どうして路上にテーブルを置かなければならないのだろうと思いました。むしろやるべき場所はセミオープンカフェではないですけれども店舗の前の店舗内敷地と歩道との空間だと。例えば、仙台市の場合、公開空地であるのに関わらず、ドトールが空間を広げていくのを認めたりしましたけれども、店の屋根がかかっているセミオープンの空間でカフェを行えば、トランジットモールにより歩行空間がもっと確保できる。雨入ったときには中に引っ込むわけです。ところが歩道に置いてしまうからまったく意味がなかったのです。一方で金沢市の21世紀美術館はすぐ側にあって、雨降った時にはそこの無料コーナーでみんな楽しくオープンカフェしているのを見た時に、何の目的でオープンカフェをやったのだろうとすごく感じました。交通の調査が大事なのかと感じました。そんな時、静岡に行った時に目からうろこでした。静岡のオープンカフェ、トランジットモールの体験は、商店街を全部巻き込んでそこで物語をつくろうといって、最初にお茶屋さんの前に全員市民が集まります。そこでトランシーバーみたいなラジオとルートマップをもらって、そこで最初にお茶を飲んで、そこで指令を聞いて、その商店街の次の蒲鉾屋に行きます。蒲鉾屋に行って蒲鉾とはんぺんをもらいます。でもそこで食べないでと。食べないで次の店まで我慢しろと言うのです。我慢するとそこから1分歩くと、そこから今度は商店街のわさび屋さんに行って、今もらってきた他の店で買ってきた蒲鉾にわさびを塗れという訳です。それを塗って食べなさいと。そうすると次はお茶屋さんが待っていてお茶飲むわけです。その次に今度は西武に行って地下に下りていけというと、そこでパン屋さんがあって甘い味をちょっと確かめてみなさいと、甘い味を口に持っていくと、次の指令が、そこから15mくらいの脇にあるカレー屋さんに行ってカレーのルーを食べてくると、なんか口の中がぐちゃぐちゃになってしまうのですが、先ほど基調講演で歩行限界距離300mと出ましたが、結果的に全部で1km歩いているのです。順番、順番でその時に繋ぐ物語みたいなものがモールの中で提案しながら、それに通行規制をかけていくという実験を静岡市のNPOグループがやっています。あまりにもうまくいっているのでここを国交省の方が何回も視察にくると言っていました。社会実験の時、その物語を一緒に提案するような社会実験だと。

木谷補佐

本当に金沢も他の交通実験を山ほどやっておりまして、最近はいつの間に実験することが目的なのか、全然見えないというジレンマに陥っているところもあります。正直言って個人的な考えなのですが、交通は生き物なので、要するにどこかが通りにくくなったら時間さえ経てば、決定的なシャットアウトがない限りなんとかなるのですよ。だからそれで本当にそれで何が使いやすくなり、何かしら地元の商店街の方が仕掛けて、それを市民の方が楽しめるということを、これから見つけていかなければならないと思っています。我々ができるのは、最終的には交通量がどうかという仕切りを取らなくてはならないと思うのです。けれども、それがどのように本当に何を目指して何をするためにストーリーをどれだけ作れるかが勝負なのかと思います。

北原先生

はい、ありがとうございました。八戸の場合このトランジットモールの社会実験とともに、街なかの都市体制の市民ワークショップ、その物語づくりと平行していかないとトランジットモールの意味が出てこないということです。平成18年度の結果を期待したいと思います。それではこのトランジットモールに関することには終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

それでは最後のテーマになりますが、一つは資料の5−1として仙台の河川国道事務所、資料の5−2については仙台市の方で、お話いただきたいと思います。

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