意見交換会:「都市交通・公共交通について」
はじめに
北原先生

本日は、「都市交通・公共交通」ということで、4つのテーマに分けて意見交換していきたいと思います。テーマは「公共交通への転換」、「都市交通(循環バス)」、「トランジットモール」、「自転車交通」です。テーマごとに自治体から事例報告をしていただく予定です。それではいわき市の方、宜しくお願いします。

テーマ1 公共交通への転換
いわき市

「バス利用等総合対策調査事業社会実験結果概要」

本日御用意しました資料は、「資料2」と表示がしてある資料と、社会実験の2つのパンフレットです。10分程度のお話ということでしたので、このパンフレットについては後ほどご覧頂ければと思います。

今回、社会実験を行ったのは、市の中央部のあたりです。パークアンドバスライド、それから常磐地区の移動手段の確保の2つの社会実験です。まさに今、社会実験が終わったばかりという状況で、これから本格分析です。また、手持ちの資料から作っていますので、まだ内容が深いものではありません。

この2つの社会実験に取り込もうとした背景ですが、本市は市域が広く、都市計画区域は市域の約3割程度しかありません。市街地は非常に低密度で、中小都市がほとんどです。また、昭和の大合併(昭和41年)で誕生した市であり、都市構造が多核分散型になっています。一極集中でないことから公共交通が入りづらく、平成13年度に行ったパーソントリップの調査では、移動手段の7割がマイカーを使っているという結果が出たぐらいです。この状況の中で、我々は公共交通施策の切り口として3つの視点を考えました。

一つは輸送手段です。今まで公共交通は、市に1社しかないバスに頼ってきました。この形を見直して、多面的に色々な交通手段を入れながら、ネットワークが構築できないかという視点です。

もう一つは運営の視点です。今まで公共交通は、そのバス事業者に頼りきりで、市と国の補助金などにより運営してきましたが、先般の改正により、国庫補助金の対象外となりました。我々の市の補助金だけでは到底上手くいかず、先般廃止の話が大々的に出たところでした。この解決のためには交通事業者と我々行政だけではどうしようもないので、行政、地域住民、企業、そういった多様な方々が連携、協働しながら運営が図れないかということです。

最後は意識的なところです。やはりマイカーがこれだけ浸透しますと麻薬のようなものであり、何より便利なものから不便なものへ転換するのは非常に難しいと思います。その中でもやはり意識付けが必要だろうと、シンポジウムも開催してまいりましたが、今回は、まず実体験していただこうと、社会実験に取り組みました。

地域が広域に亘るので、実験につきましても、一つは人口が多く車も多く走っていて需要が高密度な地域と先程の路線バスの廃止地域のように新しい交通システムが必要だけれども、人口が少なくて潜在需要が少ない地域を対象とした社会実験を実施することとしました。一つはより高密度な公共交通の輸送を心がけながら、もう一つはそれにつなげる交通手段として実行できないかと取り組んだ内容です。

1ページのパークアンドライドの社会実験、こちらは中心市街地、平地区というところがあります。ここに向かって行くパークアンドライドの社会実験です。設定した理由は、この地域間が市内の随一のトリップ数で、非常に交通量が多いので選びました。その他の視点としては駐車場の確保です。新たな駐車場を確保するのは難しく、行政でも空いている土地を持っていませんので、この周辺には大型の店舗が集中していることから、駐車場を借りられること、最後に、既存バス路線の運行頻度が非常に高いので、万一急行バスに乗り遅れても一般のバスでも行けるということです。

続いて、2ページですが、この社会実験は11月に4日間実施しました。急行バスは所要時間を大体30分くらいと見込んだコースを走らせました。朝方2便、夕方1便です。次に駐車場ですが、大型の店舗の駐車場をお借りいたしました。参加費等は無料とし、参加者を呼び込む導線として、バイオディーゼル燃料を使った環境にも良いバスを使用することや、朝2便夕1便の急行バスの中には、朝刊、夕刊のサービスまで行うこととしました。しかし思うように参加者は集まらず、属性のとおり、モニターの7割強が市の職員でした。市内で一番大きい事業所が市役所なので、これもやむを得ないことかと思います。

参加者の駐車料月額は市の中心市街地ということで平均6千円程度の駐車料金を自分で負担している方々がモニターとなりました。3ページはモニターの評価です。朝の急行バスの運行時間帯についてはまあまあ満足という結果でした。しかし帰りの時間帯については、6時台に1便のみの設定であったことから、残業等でこの便に乗れず、一般路線バスに乗車した方が多かったことから、不満の回答が多かったです。我々としては、帰りの時間は分散するだろうという意図で1便しか設けず、一般路線バスの利用を考えたわけですが、残業が恒常的になっている人は早く最終バスが行ってしまうのでどうしようもないという意見も出ました。今回の快速バスが30分から40分程度でバスが運行できたので、予想以上に早く行けたという評価がありました。人数が全体で80人しかありませんでしたし、ルートが様々でしたので、当初予定していた効果のうち、渋滞緩和については目立った動きはありませんでした。

それ以外の効果は商業店舗で、駐車場を利用させてもらった店舗でショッピングした人もいて、若干売り上げが伸びたということもありました。今後の交通政策と商業の結びつきに多少なりとも可能性があったかと考えています。

本格な利用実施にあたっては、やはり自分で今駐車料金を払っておりますので、これより高くてはだめだという事で、月極の駐車料金代の半分位にして欲しいという話が一番多かったです。それ以外にも3便しか走らなかった快速バスをもっと増やして欲しい。帰りの時間を見直して欲しいといった意見が非常に多い結果でした。次に今後の取り組みとして内容が非常に薄いのですが、我々と交通事業者だけではなく、今度は商業店舗が駐車場提供者という形でやっていきたい。システムとしては、よく聞きますが、利用者は駐車料金を商品券という形で買って割安感がでる、店舗は商品券が売れたことで売り上げにつながる、交通事業者は、ある程度の利用者数が確保できるというメリットがある、三方一両得みたいなかたちです。ここで主体的には事業者の方が動いていただきたいというのが正直なところですので、今後、まだまだ詰めさせていただきたいところです。

6ページにはもう一方の社会実験を紹介しています。これは、まず輸送手段としてバスとタクシーとで連携できないかと考えた実験です。時間帯に応じて、朝方の時間帯の利用者の集まりやすい時にはバスを、それ以外の時間帯については目的も別々なので相乗りのタクシーを利用するものです。同じルートの中で、時間帯に応じてバスとタクシーという組合せをしました。その検証が先程、地域で支える仕組みと書いてありますが、委員会を立ち上げて、我々以外に地域の事業者、地域住民、交通事業者が入り、その中で議論を進めながら社会実験に取り組みました。当該地域を選択した理由の一番の大きなところには路線バスが廃止になった地区だからです。社会実験であっても、有料とすれば免許申請が必要になるというのを皆さんご存知かと思います。その際、バス路線との競合は許されておらず、バス事業者の方でも自身の営業エリアを守りたいというのが非常に強かったようで、なかなか他の地区での展開というのは法律上難しいです。その中で、廃止路線が明確になったところで社会実験を実施いたしました。こちらに湯本という温泉街の駅があります。この駅の周辺で実施し、期間については以下の3ヶ月間行いました。相乗りタクシーということで、今までにないシステム、特別な予約の方法もありましたので、慣れるまで時間がかかるかと思いました。この期間に少しでも多くの皆様に実際、体感してもらおうという考えで2ヶ月間無料、最後の1ヶ月間は有料という形で本格運行を念頭において実験をしました。名称は「おはようバス」と「相乗りタクシー」という名称ですが、バスは、朝方の2便、小型バスが運行しまして、相乗りタクシーは大きな10人乗りのジャンボタクシーではなくて一般のタクシーを利用しました。これは、これからの運行を考えた時に、歳出抑制のため、空きタクシーの利用をできないだろうかと考えた結果です。委員会は先程申し上げましたようなかたちで作ったものです。12月に終わったばかりなので利用状況しか出せないのですが、バスはあまり思うような利用者はありませんでした。利用目的の大半は通学、今まで徒歩で通っていた中学生などが乗りました。私どもの予想としては、金額が200円くらいということで利用者を期待しましたが、有料になった時、利用が全くなくなりました。結果的に3ヶ月目は3分の1以下の利用状況になってしまいました。利用者の大半が中学生、高校生が若干いましたが、その通学用にお使いいただいた。一般の方も若干おりましたが、この方も有料になったとたんに乗らなくなりました。

一方で相乗りタクシーということで朝方の時間帯の後、ほぼ12時間強、相乗りタクシーをある程度の時間を設けて実施しました。運行は全体で41便を設けました。これは無料期間中ですが、利用は1日30人程度でした。予約の方法は、どこからどこまでというような番号で予約をしてもらうなど、新しい仕組みを入れたものですから、浸透が図りきれないうちに終わってしまったと思っております。しかし、最初の一ヶ月間と次の一ヶ月間とを比較してみますと、微増という結果になりました。口コミの動きがもう少し期間をおけばできたのかと思っています。有料になった時には、人数は減りました。しかし、バスほどではなく、路線廃止になった地域ですから、生活上利用しなければならない人が利用しました。一日当たり20人で、年齢別の利用状況を見ましても、利用者は50代から後半が大半の方です。利用目的は、病院や買い物でした。50代の方が多かったのは、通勤に使ってもらったようで、それで利用率が増えたということができます。有料、無料期間とも目的としては通院、買い物、その他、これは先程の通勤等も含めまして、それほど差がない形でした。これから改めて検証が必要になります。ところが我々が12月に社会実験が終わった後、地元に3社あるタクシー事業者から、1月から3月まで試験運行を実施しますということで事業者独自の取り組みとして、運行を継続しております。これは試験運行と同じ300円という料金で実施していますが、非常に苦戦しております。少し期間をおいたので、利用者が減ってしまったかという話をしています。状況としては、また利用者が一日20人から更に減っている状況です。こちらは沿線の事業者の方は、協賛金や広告費用など、新たな仕組みとして我々と交通事業者だけでない仕組みが考えられないかと始めた社会実験だったのですが、この利用状況では正直頭を抱えているところです。

社会実験は行政指導で動かした感じが非常に強かったです。確かに行政指導で動かないと動けない地域もあるのですが、動きすぎると行政のやっていることだからということで、利用者の転換が図れなかったと考えられます。次年度の予算の中では企画提案のような形で事業者と住民の方々から原案を求めて、それを支援していくような仕組みづくりができないかなと、地域の方から声が上がってくる仕組みを考えているところです。以上で終わらせていただきます。


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