意見交換会:「まちなか居住ついて」
北原先生

はい、ありがとうございました。では、中村先生お願いします。

中村先生

(2)まず景観の問題、これについては野嶋先生からでてきた上尾の事例がひとつの解決方策かなと思います。どれだけの住宅ニーズがあるのかというのと絡んでくると思いますが、「どこまでだったら許せるのか」という合意を住民の中ですることだと思います。そこにはある程度の乖離があると思います。その部分をどう埋めていくのか、または埋めないのかということを住民の中で合意形成していくということが重要だと思います。

(1)まちなか居住にどうやって若い世代をミックスさせていくかということですが、若い世代というのは子育ての家族型と単身型の二通りあるということをきちんと想定しておかなければならないと思います。子育て世代というのは、子どものための施設などが必要になってきますから、それをセットにしないと絶対に戻ってこないと議論されています。家族の世帯構成を見ると、全世帯の中で核家族というのは3割しかありません。残りの3割は単身型の世帯で、他の4割がさまざまな形態です。今男性の生涯非婚率が12%を超えています。ですから、一生結婚しない人が、10人に1人以上います。そういう状況の中で、単身をどう入れていくかを考えたときに、色々な施設やコミュニティビジネスのようなニーズがあるのではと思います。その辺りで空き家を上手く利用するなど、ストックを上手く利用する仕組みができてくると、ミックス居住が少しできるのではと考えています。

(4)まちなかと郊外という対立的な関係、つまり人口減少時代の中πをどうやって取り合うかということだと思うのですが、鶴岡市の場合、本当のまちなかと言われているエリアと、その近郊部と接しているような縁辺部は非常に密接に関係している住み替えをしています。中心部をひとつとして捉えるのではなく、中心部と郊外部がそれぞれ6つのエリアに分かれていて、関係を持っているという状況ですので、中心VS郊外という問題ではなく、中心と郊外をどうセットにしていくかと思います。ニュータウンでも、センター地区はひとつのまちなかで、そのセンターから少し遠いところは、ニュータウンの中の郊外というような、小さなまちなかVS郊外があります。ですから、それぞれの対立関係を調和の方に持っていくことが重要なのだろうと思います。

中古市場のニーズですが、ニーズそのものが減っていくと思いますが、住宅としてのニーズだけではなく、コミュニティビジネスなど他用途の中でのニーズというものを掘り起こしていくことが非常に重要だと思っています。鶴岡市で今回の本格運用の前に空き家対策行ったのですが、いろいろな法規制にひっかかりまして、問題になったときもありましたが、そのような法規制の緩和も誘導方策も必要かなと思います。

(3)マンションの県内外業者ですが、全国展開しているような業者と、地元で頑張っている業者は半々かなと思っています。県外業者とどうつきあっていくかということを考えると、やはり地域全体の中でどういうルールづくりをしておくかということだと思います。県外の業者がマンションをつくるときでも、このルールだけは守ってもらいたいということを伝えることができるかどうかということが一番のポイントじゃないかなと思います。

以上です。

北原先生

はい、ありがとうございました。

私自身もいまの課題に対して、東北でどう考えるかということをお話しして、私の司会を終わりにしたいと思います。

(1)ミックス居住を進めていきたいと言っても、例えば公営住宅法が単身で住むことを認めるのは、高齢者の特別な仕様※だけであります。弘前市の土手町商店街で、どんな人に住んでもらいたいかというワークショップを開いたときに、高齢者だけでなく、若い人たちに住んでもらいたい、弘前大学の女子学生に住んでもらいたいという話が出ました。しかし、弘前大学の女子学生は公営住宅には住めないと言われました。そこで高優賃に持ってこようということになりましたが、高齢者優良賃貸住宅というのは、高齢者しか入れないということで、困ってしまいました。そこで借上公営住宅をつくれば、若い人たちが入るだろうと言って、公営住宅をつくったのですが、単身は入れないことになり、仕方なく商店街の人たちは2階建てに建て替えるはずだったのを3階建てにして、3階を賃貸しとして、4万円くらいで単身者を入れるかたちになりました。公共住宅政策は高齢者以外を対象としていないのですが、公共が若年の単身者に対して何もできないだろうかということがやや気になります。
※公営住宅法(第23、24条)において、現に困窮しており、居住の安定が特に必要の場合、老人等が入居の特例が認められている。

(2)2つ目は景観の話ですが、先ほどの借上公共住宅は岩木山への眺望を阻害してはいけないということで、5階建てとしました。しかしそのすぐそばに県外の業者による13建てのマンションが建ちました。これから景観補助はありませんが、景観法とこのような話を連動したまちづくりが必要だと思うので、景観対策しながら、ルールをつくっていくことが大事ではないかと思います。

(3)それから外から来た業者と地元の業者ですが、これは外の業者を排除しようと言っているわけではなく、外から来た業者は、その地域の持続可能性を考えるよりは、売っていくという話を考えているため、周りがどうなるかということについてはほとんど考えていません。それは彼ら悪いわけではないのでなく、その動きに対してどう連動していくのか、商店街で何がカバー出来るのかということについては、地域の責任ではないかと思います。それがパートナーシップだと思うので、敵対ではなく、自分たちの周りの動き、文化や福祉などと上手く連動していかなければならない気が致しました。

(4)そして最後に郊外と中心の話です。郊外の住宅を高齢者が手放していくという話があったときに、転売というメカニズムなのか、賃貸という話なのか、実は中古住宅市場のマーケットが、特に賃貸市場が東北は非常に弱いので仕方なくアパートに住むしかないと。賃貸マーケットを郊外とまちなかとの間で交換していかないといけないなと。つまり、あるライフステージではまちなかで楽しみたいが、子どもを育てるときには郊外に住むというように、ある時間帯はここに住み、ある段階になってくるとまちなかのマンションに借りて住む。ここで所有というかたち、高齢者にマンションを買わせるという話は果たして大丈夫なのかということを気にしています。賃貸のほうが相続も含めて楽なのではないかと。ではそのときの賃貸料はというと、郊外に持ったものを担保にこれを返せるというか。この辺りのネットワークを上手く組んで、ダイナミックに動かしていかないと、高齢者に特化した分譲したマンションの30年後、もしはどんなふうになっているのかと思うと、やや怖い気がします。息子達がそれを買ってくれるのか心配ですし、それならば高齢者にも優しい、若い人たちも含めて賃貸とした方がリアリティがあります。

以上長くなりましたが、まちなか居住というのは、なんとなく人が増えてきたというようなレベルのものではありません。都市の持続可能性を考えていく場合に、ひとつの切り口としてまちなか居住からスゴロクをスタートした場合に、あがりがかなり違うところに出てくる可能性があるくらい包括的な、重要な言い方になっていくのだと思います。その辺りを少し肝に銘じながら、研究会を続けていくべきだと思います。


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