中心市街地再生に向けた取り組みについて
北原先生

はい、ありがとうございました。これで9つの都市の事例をお話し頂きました。非常に熱意があって、これからが楽しみだなといった事例を聞けたことが収穫だと思います。

今日のテーマは「中心市街地の再生」について、そして岡部先生のお話に出てきたまちなかというものが光り輝いていくような考え方、今までの経済の中心の考えとはまた違うまちなか力というものが、東北の事例を聞きながらどんなかたちで描いていけるのかというのを議論できたらと思います。

まずは、事前に岡部先生に秋田市さんと福島県さんから質問が来ていましたので、最初はここからスタートしまして、今の事例について感じたことなどを含めて、中心市街地再生というテーマで議論を進めていきたいと思います。

最初に秋田市さんからお願いします。
秋田市

秋田の中心市街地は、先程お話ししたとおり、遊休地や空き店舗化がかなり出てきていて、商業だけの活性化というのは今後難しくなるのではないかと思います。都心住居というのは、秋田の場合積雪等もあるので、都心での生活は交通の便や環境の便からいっても、今後高齢化が進む中、非常に便利なものとして見直されてくるのではないかと思います。ほとんど商業地域として指定されている箇所ではありますが、その辺は実際住居を中心とした転換を図る場合、ただ両方用途地域を建てられるものはそのままでもいいのか、用途の変更を考えながら取り組んでいくべきなのか、その辺をお教え頂ければと思います。

北原先生

はい、分かりました。では岡部さん、お願いします。

岡部先生

まず、今多くの都市で駅前は基本的には商業地域であるのに対して、商業だけでは埋まらないということで、住宅を入れていこうというような話があるかと思います。確かに、まちなかというのはお店だけあればいいのではなくて、そこに衣食住近接のまちなかがある方が賑わいを創出しやすいため、住宅を入れるのも正当化できるのではないかということで、本当は商業の方が嬉しいけれど住宅を入れていこうというのが大きな流れだと思います。そこで一番問題になるのは、商業であればその地区はある程度自立的に成り立つわけですが、これが住宅になると、経済的な収益の面では商業よりもはるかに落ちます。それが正当化できるものなのか、落ちている分を行政が負担することはいいことなのか、していいのかというところが問題になっているのではないかと思います。そこで、今日お話ししましたように、まちなかに人が住み、近所で買物をすることで、まずベーシックな賑わいとしてあるということが、都市にとって極めて重要であることが、まず都市全体で共有されていないと、なかなかまちなか居住に対して行政が手当てすることは、市民のコンセンサスを得にくいことなのだろうと思います。

それから、都市計画で用途変更をして対応すべきかどうかというお話がありましたが、ヨーロッパの話をしますと、都市計画権限が基本的に地方自治体にあるために、全国一律の同じ用途地域がありません。日本のように、どこの都市に行っても商業地域などが同じルールであるという事はありません。もちろん工業専用地域であるとか、ある程度どの都市でも共有できるような用途地域規制を持っている国もありますが、特にまちなかと言われる歴史的に固有の発展をしてきたところは、ひとつの地区として指定されており、個別具体的にその都市の状況に応じて規制をかけているというのが一般的です。なので、どういう規制の用途地域に当てはめるかというよりは、その地区がどういうふうに歴史的に形成されてきたかをルール化したところで、地域の規制などを加えているというのが一般的です。気の長い話になりますが、日本も地方分権がしっかり進めばおそらくそういう方向になっていくと思いますが、そうなれば既成の都市計画の中でどうした用途地域にするかという話ではなくて、もっとその地区に相応しいようなルールづくりというのがかなり強制力を持ったかたちでできていくだろうと思います。その中で日本の場合にはかなり自由な規制の中で苦労されて、いろいろなかたちでルールづくりを共有しようとしていま、やはりまちの中心に関しては、ヨーロッパ型の厳しいところがあっても良いのではないかと考えます。以上です。
北原先生

はい、ありがとうございます。鈴木先生、いかがですか。

鈴木先生

直接関係はないのですが、少し福島市の具体的なお話をします。福島市の真ん中にまちなか広場があります。そこは福島市のもともとの目抜き通りで銀行だった土地があります。これはみずほ銀行グループに統合したので、みずほに統合する関係機関がたくさんあり、一点に集めれば良かったので、それ以外のところが空きビルになっていました。その空きビルになっているまちなかの目抜き通りの一画をマンションディベロッパーが購入して、マンションの建設が始まりました。目抜き通りですので、マンションをつくるのはいいけれど、まちの賑わいという観点からすると、マンションの1〜2階は商業業務系の賑わいの雰囲気をつくっていかければならないと、商工会議所や商店街の皆さんで業者さんに頼んだのですが、これには答えて頂けませんでした。目抜き通りの一日の交通量から判断すると、ここに商業施設を誘導することの方がずっとリスクが大きい。それに対して銀行は融資をしてくれないということになって、このマンションは1階から全部マンションという事になりました。

つまり、まちなか居住は、まちなかが一定の利便性や文化、賑わいがメリットになっていたから売りにできたと思うのですが、まちなかはお医者さんが少ない、生鮮野菜が買えない、まちなかの賑わいが過去ほどではないため将来見込めるかわからないという変曲点を今迎えつつあって、まちなか居住を考えるときに、一定のまちなかでの利便性(公共施設を含めた)が、本当にこれからのまちなかのイメージとして、あるいは一定の計画の仕掛けとして確保できるということをどのくらい示せるか、瀬戸際のような気がしています。例えば福島市でまちなか居住をやろうとすると、まちなかを将来どういうイメージにするか、わたしたちのまちは商業だけではなくいろいろな文化や医療福祉などが存在している地域にするというように組み合わせてまちなか居住をアピールしないとならない状況が生まれる気がします。まちなか居住を進める際に重要なことは、まちなかに住むことでまちの風景・光景がこうなって、だからまちなか居住というのは大切ではないかというような説明をしないといけないのではないかと思います。

日本の都市計画でも、立体容積制のようなものを導入することが技術的にできるようになってきているので、容積率が 600%であれば、そのうちの半分に届かなくても居住空間を確保するなど、一定の都市計画から一歩踏み出したような立体容積制のような考え方はかなり議論として起きているので、具体化できれば地区計画制度などがより立体的な方向になるのかなという感じが致します。


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