東北地方の地方都市における「コンパクトシティ」とは何か/「コンパクトシティ」実現に向けた方策は、どんなものか
北原先生

ほかにいかがでしょうか。

では、どうぞ。
青森県

先程の岩手県の方から、(農政局側が)農地を本当に守ろうとしているのかとありましたけれども、私もそのように感じます。また、中出先生の方から農振農用地をしっかり守ってほしいとありましたけれども、逆に農振農用地の方がむしろ弱いのではないかという気がします。というのは、例えば我々都市サイドが将来的な開発に対する規制を目的として、調整区域地区計画を立てようとしても、農振農用地では無理です。(農振農用地は)そのような守りに対してはすごく強いのです。反対に具体化した事業には非常に弱く、知らないうちに開発許可が下りているといった感じがします。

都市サイドからのアプローチもできず、農政サイドからの守りもできないという状況の中、最近市町村の条例による土地利用計画でゾーニングが行われていますが、市町村の条例による土地利用計画が、現行の法体系の中でどれほどの意味があるのかが疑問です。悲観的に考えれば、行政サイドの意思表示に過ぎず、それで開発をコントロールできるところまではいけないという気がしていますが、その辺についてお聞かせください。
中出先生

あと 10 年我慢すれば、国も法律の上乗せをダメとは言い切れない時が来るとは思いますが、今どうするのかというのが問題で、都市計画法は枠組みを決めるだけで、条例を決めた場合、条例を優先する制度に都市計画法を改正しないと、どうにもならないのではないかと思っています。ただ、条例は確かに限界がありますが、神戸市や長野県穂高町の条例等が有名になっていますね。長野県に松川村というところがあるのですが、そこの条例はとても厳しくて、農用地区域を解除する場合、他の場所に農用地区域を入れなくてはなりません。つまり農用地区域の総量は絶対確保するという条例です。それは相当機能しています。穂高町の条例も機能はしていますが、抜け道がないことはないです。もともと農振白地が点在している穂高町では限度がありましたけど、松川村は農用地区域が一体として整備されていたので、優良農用地を確保する条例がつくられています。それは穂高町が厳しいから、それより規制の緩いからと北の松川村に来られると困るので、防御的な条例をつくった経緯があります。そこは首長がその気になったので、市町村の土地利用計画の条例の運用が相当できたわけです。首長が大型店舗を歓迎しているようなところではダメですね。

また、金沢市では商業集積環境方針というガイドプランとまちづくり条例を一対一で対応させていますし、京都も商業環境の形成ガイドプランと土地利用調整を連動させて、大型店舗 3000ha 以上は来てもらわないようにしています。そこまで連動させると、商業者も一応踏み絵をされているということになります。確かに(条例が)精神規定的なところがあって、横紙破りされるとどうにもならないこともありますが、それでも来るということは、商業者の責任ですね。住民がそのような企業が良いと思って買っているとしか言いようがありません。

鈴木先生

農振地域で優良農地というところでも農振事業という網をかぶせたときに、農振事業の中に工業誘致をすることができるような格好になっていて、あっという間に農用地でなくなることが、首長さんの判断次第で多くなります。これからの都市計画は、分権化の時代ですから、それぞれの地域で都市計画や農業行政をどう連携するか責任を課せられ、それぞれの地域のまちづくりや政策能力が試される時代になってきておりますので、その辺の連携とを重要視する必要があると思います。

コンパクトシティ研究会の時も、当初は東北 6 県の 64 都市について、都市計画マスタープラン、住宅マスタープラン、中心市街地活性化基本計画がそれぞれどう連携しているかを調査しました。この中に、まちなか居住や、市街地拡大の考え方がそれぞれの計画によってトーンがかなり違う例がたくさんありました。ここをどう重ね合わせるかというのが、それぞれの自治体の政策能力になっていくと思います。そのため、都市計画サイドの方からも農業サイドとどう連携するかがとても重要で、例えば福島県のような広域都市計画マスタープラン等、それぞれのマスタープランは市街化区域や都市計画区域だけではないところでつくっているはずですから、方向性の違いが生じない計画づくりをしていく必要があるのではないかと見ています。

北原先生

今お話ありましたように、都市マスと住マスと中心市街地活性化基本計画しか調べなかったというのが、都市計画をやっている私たちの限界でありました。本来ならば農業の振興ビジョンや計画をどう進めていくかを全部重ね合わせてみていかなくてならないということを今日のお話を聞いて思いました。

都市計画審議会のテリトリー以外の部分で、農業委員会が承諾してしまえばできてしまうということが実際あるわけで、そこを都市計画と農業の方々と突き合わせを行い、そのほかで中出先生がおっしゃったようなしっかりとした条例等でコントロールしていくことが、東北、あるいは北海道、北陸でコンパクトシティを考えていく上で考えていくしかないと思っています。

もちろんこの会は都市計画サイドの人に集まって頂いていますが、農政のサイドの方々とつっこんだ議論をしていかなくてはならないという気が致しました。

それでは今日の本日の意見交換会は終了とさせて頂きます。

今回は中出先生中心に話して頂いて、農村等に関わる話を色々して頂きました。次回はまちなか整備等や都心居住の話をするような機会を設けたいと思います。


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