東北地方の地方都市における「コンパクトシティ」とは何か/「コンパクトシティ」実現に向けた方策は、どんなものか
鈴木先生

今、福島県で起きていることをお話します。

都市計画区域以外、特に国道4号線や幹線道路沿いに大型店舗がたくさん張り付き始め、これからますます店舗の進出が予想され、これまでの市街地の空洞化に拍車をかける。このような状況があり、中心市街地の再生等をにらんだとき、郊外部、農村部の幹線道路沿いの大型店舗進出をどうするべきかが、今、福島県では大きな課題となっています。これは、国土利用計画法、農振地域、都市計画区域、更に言うと商業活性化の課題、これらが全部複合的に絡んでいるので、福島県の場合は商業対策をする部局、都市計画の部局、農政の部局、国土利用計画に関する部局が連携してこの大型店に対してどう対応したらいいのかを昨年度末に方針をつくりました。それに基づいて、今年度は県独自の条例をつくろうということになっています。いずれにしても、私たちは土地利用規制をどこまでできるのかということと大型店舗自身は地域にどのような張り付き方をしたいと思っているのかや地域貢献を考えているのかについて、県の都市計画網で改めて土地利用の問題に受け止めて欲しいと思っています。これは今の政権政党のなかでも、議員立法してでも今の大規模店舗立地法はダメだという話になりつつあって、この制度改正の動きにもなりかねません。全国の商工会議所連合会の方でも、これに対して全面的に見直しを図ろうという動きになっています。今の都市計画法とは筋違いかもしれませんけど、農村地域の活性化というのはどうあるべきなのかという議論が行われているのは事実です。福島県では、国道4号線に10haの大型店舗が計画されているところがあります。そこは水田地域でした。1反歩当たり10俵できたとして、純粋に収入になるのが、7〜8万円です。ここを大型店舗は1反歩70万円で買ってくれるわけです。10倍です。このような中で、農業をどう守るかというのが大きな課題で、その農村部を大きく抱えているのが地方都市の基本的な枠組みだったわけです。大都市と違うのは、歴史的に言うと市街地と農村部は連係プレーができていました。農村部の生鮮野菜が市街地を支えていました。今はこの周辺の農村部はその市街地を向いていません。東京に直行するような仕組みを政府がつくったのですね。農産物安定供給法というのができて、これに基づいて郊外の農作物は都市部に直行するようになったので、周辺の農村部の人たちは中心市街地が空洞化するかどうかは関心が無く、ましては大型店舗が自分たちのところにできたら便利だという動きさえ出てきた最中、重要なことは都市計画を考える際、都市計画部門の協力の下、周辺の農村部の発展形態を考えることが必要だと思います。地方都市は市街地と農村を持っているので、産業や経済の循環系の定義をしないと、都市計画自身が成り立たないのではないかと思うので、この点についても、行政内の農政局と都市計画が連携して、一歩踏み込んでいかないと、都市そのものも空洞化してしまうし、農村地域は相変わらず市街地に迎合的になる。このような流れをどう軌道修正するかが大きな課題だと思います。

北原先生

いまの話を語るべき資格があるのは、東北地方の都市ですし、それを語るからこそコンパクトシティという言葉を標榜していいと私は思います。それでは福島県の方からお話お願いします。

福島県

今先生がおっしゃった福島県北都市圏域ですが、30万弱の福島市を中心として、その周りに1万〜2万のまちが周辺にあるという関係のなかで、福島市はまちの中心部の商業が非常に衰退しているという実態がある。周辺のまちとしても、非常に人口が減っていくなかで、どうにかしてまちの活性化を図っていきたいということで、母都市と周辺のまちとに利害が対立する部分があるというのが構造ですね。そういう中でこれまで以前であれば、雇用の機会を確保するために、工業団地をつくって工場を誘致するというのが手段であったのですが、もはや工場が来ない今、まちの活性化を図るために、大型店舗を誘致して、そこで雇用機会の場を確保するというのが、周辺町村の首長さんの考え方になっています。では母都市と周辺部が非常に利害関係が対立している中、都市計画はどのようにコントロールしていくかというところをまさに悩んでいるところであります。

福島県の中で、先程の瀬戸口先生がおっしゃった「コンパクトなまちづくり」というような表現をしている会津若松市は城下町でまさにコンパクトな状況になっています。これは周辺がしっかりとした優良農地で覆われておりまして、都市が拡大したくても拡大できない状況をつくっていて、人口も11万人ぐらいで維持されています。これは周辺の農地をつぶして大型店舗が進出するのではなくて、市街化区域の中に大型店舗が立地しており、比較的コントロールされたまちになっているのかなと思います。

市街化調整区域をどのようにコントロールするのかが問題であり、更に問題なのが白地地域であり、私たち都市計画側としてはコントロールしようがなく、都市計画の限界を感じております。


前へ 次へ プログラムへ