「地方都市の土地利用規制・誘導について」(基調講演)
中出文平(長岡技術科学大学教授)
もうひとつの問題点は、ある集落だけ指定既存集落の範囲と農地転用のデータが全部手に入ったので示しますが、指定既存集落の範囲は、青の外側のラインで、農用地区域が黄色の範囲で、黄緑色のところが重複しているところなのですが、つまり指定既存集落は、本来の宅地だけの集落の部分よりもう少し外側まで指定しています。つまり、指定既存集落に指定された1995年時点以降、わずか数年で農用地区域から除外されて、開発がされているということです。現状に残っている農用地区域も、結果的には全部開発されてしまいます。
新潟市の集落の指定状況は、長岡市と状況はほとんど変わりません。実際は昭和62年に指定された集落で開発がたくさん起きています。ただ新潟市は中核市ですので、自分のところで条例を設定することができるのですが、今のところ都市計画法第34条は考えていません。新潟市は平成17年の3月に合併することが決まっていますので、合併市町村と合わせた制度にしたいと今考えているのですが、実際には指定既存集落と農用地区域の重複の問題というのを抱えていて、もう既に除外されているところがあります。 次は、ここ数年私が追いかけている内容は、コンパクトな都市をつくる仕掛け、つまり、中心市街地をいかに活性化させるかと同時に、郊外の市街地拡大をコントロールしなくてはいけないということについてで、鈴木先生、北原先生、瀬戸口先生も含めて、みんなで「中心市街地再生と持続可能なまちづくり」という本を平成15年の11月に出版しました。それぞれが福島市、弘前市、稚内市、十日町を担当しており、全部で稚内市から那覇市までの22都市を事例に挙げています。 それについて、ここ30年間以上も区域区分制度を運用しているので、その実態についていろいろな面で考えてみました。地方都市の特徴というのは、多様であるということです。多様というのは、様々な人口規模の都市があるということです。大都市圏が中心部と郊外部の住宅地しかないのに対して、地方都市というのは様々なものがあります。かつ人口規模も、大都市圏は2000年においてほとんど地方自治法の市への昇格要件、合併での緩和要件ではない昭和30年代に定められた合併要件5万人以上の都市ばかりになっているのに対して、地方都市は5万人以上の都市もありますけれども、ランクアップしている都市よりは、合併はしたものの人口が伸びない都市の方が非常に多いわけですね。人口3万人要件のときに市になって、それ以降5万人に達しない都市の方が多いわけです。 区域区分をしており、かつ平成2年の国勢調査で人口10万人以上の地方都市圏の自治体が100ありましたので、この100の自治体を研究室で10年くらい追い続けています。1975年以降に市街化区域を設定した都市において、この30年くらいの間に4回くらい定期見直しをしているので、市街化区域の拡大と、市街化区域内の人口密度の変遷を追いました。一番理想的な傾向は、市街化区域を拡大しないで人口密度を上げていくことです。例えば新潟市は、ある時期までその傾向にありました。一方、市街化区域は拡大しないが、人口密度が下がっている、つまり人口が減少している都市です。市街化区域を拡大しつつ、人口密度が上がらないというのは、それ相応に市街化区域を拡大している。最低なところは、市街化区域を拡大して人口密度を下げているところです。 定量的な表現だけでなく、どこの自治体も4回くらいは定期見直しをして、随時編入をしていますので、定期見直し毎に、市街化区域がどのように拡大してきたかという、空間的な分布も必要だろう思い、GISにそれぞれの時期の定期見直し毎の市街化区域を各自治体から教えて頂いたものを入力しました。 福島市では当初、飛び市街化区域を設定せざるを得ない状況にありまして、それ以降もそれぞれの線引き見直し毎に、市街化区域を広げています。これは郡山市です。郡山市は飛び市街化区域を設定していません。これを100都市行い、市街化区域の広がりのパターンをまとめました。市街化区域の隙間を埋めていくことはやむを得ない場合があります。これは特定保留ということもあるので。それからこれは、市街化区域が染み出しているパターンです。染み出した上にまた連続するパターン、それから連結型と。それ以外に飛び市街化区域からくっついているパターン、それから飛び地ができて、それがまた連続したパターンという7つのパターンに分けられます。一概に問題があるとは言えないのですが、飛び型の市街化区域がつくられているということが分かります。 金沢市は城下町で風情あると思われていますが、実は市街化区域を拡大している都市のひとつです。当初市街化区域に対して、4回の線引きでこれだけ拡大していて、その中に、穴埋め型というのもあるし、飛び地もある。連続しているのもあるし、飛び地にまた張り付く等のパターンがあります。最初の市街化区域、それから4回見直し時期毎に、当初の市街化区域の広がりや、飛び市街化区域やそれぞれに時期に出てきた飛び市街化区域や穴埋め型等をマトリックスで100作成しました。100都市全部が概ね同時期に線引きの見直しをしているので、4つの時期に分けて、この昭和の間を前期、平成からを後期として、ほぼ13年間毎に分けて、先ほどの3つを飛び型と定義して集計を行いました。 |
当初の市街化区域から拡大しているかどうかを言ってもしょうがありません。以前ヒアリングで岡山市に行ったときに、岡山市は市街化区域の拡大が少なくて優等生ですねと申し上げたら、「そんなことないですよ。最初の市街化区域設定の時に大網かけていますから、決して褒められた状況ではないです。今でも残存農地がたくさんあって困っています」ということを伺って、区域区分直前の用途地域の広がりと、市街化区域の最初に設定したときの関係を見てみようと、100都市の中から1965年までに用途地域を指定している都市、つまり線引きの時に初めて用途地域をした都市を除き、かつ1975年までには区域区分をしているという89都市のデータを調べました。 まず昭和43年の新法公布時、翌年から施行ですので、直前の用途地域指定している面積は約100万haです。(当時建設省の方が言っていたのですが)当初線引きを80万haと想定していたら、蓋を開けたら120万haになっていたそうです。用途地域と市街化区域は全然違います。市街化区域は市街化を促進するためで、用途地域は逆に市街化してほしくないから指定する自治体もあります。それが区域区分設定当初、つまり当初線引きがほぼ終わっているはずの1975年の段階において、(1969年に法が施行され、その後数年以内ということで、1975年には設定が終わっているとすると)市街化区域が確かに120万ha以上ありました。私の仮説では、大都市圏の圧力の方が大きいから、市街化区域を大きく指定したのではないかと思っていたのですが、母体も大きいので、面積はそれほど大きくありませんでした。そうではなく地方都市の方が大網をかけていたという事実がこの数字からわかってきた。つまり、当初の市街化区域設定の時から大分問題があったということです。 これは長岡市です。この赤いところが用途地域がかかっていたところです。青いところが当初に線引きしたところです。黒い部分は現在の市街化区域です。この当初の用途地域と市街化区域を比較すると、この紫色になっているところ、つまり赤と青の重なっているところは当初の用途地域の内、市街化区域としたところです。青いところは市街化区域を設定時に大網をかけたところ、ここは用途地域を指定していたが、外したところです。それを面積ベースだけで見ると、横軸は直前の用途面積、縦軸は当初の市街化区域ですが、これが同じ面積だとすると、拡大している都市が多いです。豊橋市はほぼ同じくらいです。岡山市は確かに相当拡大しているということが分かりました。 岡山市は、確かに当初線引きで拡大した部分が非常に多いということが分かります。ただ、区域区分の設定時に用途地域を縮小したところと、それから区域区分のときに用途地域の部分より大きく設定したところの両方の出し入れが行われていたことが分かります。 ![]() それをまとめたのがこれで、当初市街化区域のうち新規指定の割合を横軸に、先ほどから使っている市街化区域の拡大率を縦軸に見たところ、ここは最初から市街化区域をあまり広く指定せず拡大しないところで、こここそが優等生です。ただ人口が増えてない都市もありますので、こういうところはこれから追っていきたいと思います。一方、ここは当初狭かったのですが、我慢できずにあとで拡大したところです。ここは最初に拡大したので、そのあとあんまり拡大しなくて済んだところです。それからここが一番問題で、最初に広く指定したのですが、その後も広くしている都市です。もちろん、人口が増えているから拡大しているという理屈のある都市もあります。ただ長岡市はあまりその理屈が通らない都市です。このような累計まではできていますので、これからこの辺のところをつめていこうとしています。 |
次に、新潟県区域MPについてお話しさせて頂きます。 区域MPの研究を始めた当初は、新潟県には111市町村あって、そのうち73が都市計画区域を持っており、17しか線引きをしていなかったという実態があります。73都市計画区域を持っていても50いくつしか用途地域を持っていないという事業本位の都市計画区域を持っている県です。この中で決め直すときに、まず白地の土地利用を考えることとし、土地利用制度を一体的に利用しようとしました。 新潟県の問題というのは、湯沢のようなリゾートマンションの問題等、比較的新潟では顕著な問題があります。それ以外はほとんどは地方都市でみられる問題です。これは柏崎で、非線引きだとこうなってしまうということですね。これは中条という北の方のまちです。宅地化によりこのように水田が一反毎に潰れていくという問題です。これは湯沢の白地のリゾートマンションです。これは工場があり、住宅がありというひどい問題で、これがH16.7.13洪水で浸かった中之島町の住宅地です。水田を1mの土盛りでやっていますので、決壊すれば全部浸かるのは当たり前というところです。商店街はこうです。 そこで、自然環境や農地を残し、集落環境も維持し、地域特性に応じて白地の土地利用をコントロールするために、白地を6つに区分しようと決めたわけです。自然地域、農業地域、集落地域、歴史集落地域、ミニ開発等が起きている混合地域、計画的な開発を想定している特定地域の6つの地域に白地を分けようと考えました。白地とは都市計画区域内で用途地域がかかっていない非線引きの都市計画区域です。これは小千谷市で、自然地域があって、農業地域があって、集落地域があります。このような地域が都市計画区域内に山のようにある県です。歴史集落地域は数少ないです。混合地域は、何があるかわからないところです。特定地域は、工業団地等をイメージしています。 実際には12年度後半から、区域マスの専門家の研究会で、白地の土地利用方針をきちんと示した方がよいということになって、その1年後に県が市町村とやりとりを始めました。6地域区分するから、県は各市町村に原案の作成依頼を出しました。市町村にはそれぞれ思惑があるので、いろいろ出してきます。それに対して県が対応をして、県の修正案を出すという段取りで、最後に平成16年3月の区域MP時に、参考図というかたちもつくりました。市町村原案は、開発志向がとても強いものでした。それで県の修正案で開発志向で抑えたというやりとりがありました。柏崎市は先ほど用途地域外で無秩序な開発が行われているところです。ここは用途地域外の多くの部分を混合地域とし、つまりフリーハンドで開発できる地域にしたいという意向で描かれていて、それに対して県は困りますということで、修正した地域です。 結局白地の方針がなぜこういうことになったかというと、白地の用途規制を全部建築の形態規制と連動させようとしたのですね。つまり、土地利用のコントロールは都市計画のサイドだが、建築形態規制は建築サイドの方が仕切ることになっていて、それも含めて連動させようとしたのですが、市町村の方は自然地域や農業地域に指定すると、厳しい建ぺい容積、もしくは用途の制限がかかってくるため、用途制限は認めたとしても、建ぺい容積の規制が厳しくなるのはやめてほしいということで制度が揺れているわけです。 県は最初、非線引きの白地がある部分に、特に特定地域や混合地域に特定用途制限地域をかけると考えていました。それ以外のところについては、建ぺい容積の厳しい制限で対応すると考えていたわけで、集落地域とか混合地域については、住居系が主体の地域になるような特定用途制限地域をかけるとしていました。それ以外の特定地域については、それぞれの土地利用計画に応じて限定用途を定めるとしています。限定用途については、あまり市町村からクレームがなく済んでいます。一方で1500ha以上の店舗や工業系、風俗の規制が多いです。この辺は実態を反映しようとしていたわけです。 以上です。ありがとうございました。 |
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