河川用語集
     
水 系(すいけい)


水系名(すいけいめい)
 同じ流域内にある本川、支川、派川およびこれらに関連する湖沼を総称して「水系」といいます。その名称は、本川名をとって岩木川水系などという呼び方が用いられています。

流域(りゅういき)         
 降雨や降雪がその河川に流入する全地域(範囲)のことです。集水区域と呼ばれることもあります。

本川(幹川)、支川、派川
本川(ほんせん)
 流量、長さ、流域の大きさなどが、もっとも重要と考えられる河川、あるいは最長の河川です。

支川(しせん)
 川に合流する河川です。また、本川の右岸側に合流する支川を「右支川」,左岸側に合流する支川を「左支川」と呼びます。さらに、本川に直接合流する支川を「一次支川」,一次支川に合流する支川を「二次支川」と、次数を増やして区別する場合もあります。

派川(はせん)
 本川から分かれて流れる河川です。

その他
放水路(分水路)(ほうすいろ(ぶんすいろ))
 河川の途中から新しく人工的に開削し、直接海または他の河川に放流する水路のことで、「分水路」と呼ばれることもあります。河川の流路延長を短くして、洪水をできるだけ早く放流する場合,または洪水量が増大して河幅をひろげるだけでその洪水を負担することが困難な場合,あるいは河口が土砂の堆積などがたまることによって閉塞(へいそく)されているような場合に設けられます。

捷水路(しょうすいろ)
 河川の湾曲部を矯正して、洪水を安全に流下させるために開削した水路です。

一級水系、二級水系といった河川管理上の区別
河川管理者(かせんかんりしゃ)
 河川は公共に利用されるものであって、その管理は、洪水や高潮などによる災害の発生を防止し、公共の安全を保持するよう適正に行われなければなりません。この管理について権限をもち、その義務を負う者が河川管理者です。具体的には、一級河川については、国土交通大臣(河川法第9条第1項)、二級河川については都道府県知事(同法第10条),準用河川については市町村長(同法第100条第1項による河川法の規定の準用)が担うと河川法に定められています。

一級水系(いっきゅうすいけい)
 国土保全や国民経済を考える上で特に重要な水系は、国土交通大臣が直接管理します。全国で一級水系に指定された水系は、109水系です(平成17年度末現在)。

二級水系(にきゅうすいけい)
  一級水系以外の水系は、二級水系として都道府県知事が管理します。全国で二級水系に指定された水系は、2,713水系です(平成10年度末現在(平成17年度データ 不明))。

単独水系(たんどくすいけい)
 一級水系、二級水系以外の水系です。

大臣管理区間・指定区間外区間(だいじんかんりくかん・していくかんがいくかん)
 一級水系については国土交通大臣が直接管理しますが、その中の主要な河川を2つに区分し、特に重要な幹川を国土交通大臣管理区間と呼びます。(次の指定区間と対比して「指定区間外区間」とも呼びます)。

指定区間(していくかん)
 大臣管理区間以外の河川は、一定規模以上の水利権などを除いて、通常の管理を都道府県知事に委任しています。この区間は、国土交通大臣が指定することによって決まるので、指定区間と呼びます。

一級河川(いっきゅうかせん)
 一級水系に係わる河川で、国土交通大臣が指定した河川です。全国で13,994河川が一級河川に指定されています(平成17年度末現在)。

二級河川(にきゅうかせん)
 二級水系に係わる河川で、都道府県知事が指定した河川です。全国で7,090河川が二級河川に指定されています(平成17年度末現在)。ちなみに、一級水系の中に二級河川はあり得ません。

準用河川(じゅんようかせん)
 河川法の規定の一部を準用し、市町村長が管理する河川です。一級水系、二級水系、単独水系にかかわらず設定されます。

普通河川(ふつうかせん)
 一級河川、二級河川、準用河川以外の小河川を普通河川と呼びます。実際の管理は、市町村などが行っています。

堤 防(ていぼう)
堤防(ていぼう)
 河川では、計画高水位以下の水位の流水を安全に流下させることを目的として、山に接する場合などを除き、左右岸に築造されます。構造は、ほとんどの場合、盛土によりますが、特別な事情がある場合、コンクリートや鋼矢板(鉄を板状にしたもの)などで築造されることもあります。

右岸(うがん)、左岸(さがん)
 河川を上流から下流に向かって眺めたとき、右側を右岸、左側を左岸と呼びます。

川表(かわおもて)、川裏(かわうら)
 堤防を境にして、水が流れている方を川表、住居や農地などがある方を川裏と呼びます。

河川区域(かせんくいき)
 一般に堤防の川裏の法尻から、対岸の堤防の川裏の法尻までの間の河川としての役割をもつ土地を河川区域と呼びます。
 河川区域は洪水など災害の発生を防止するために必要な区域であり、河川法が適用される区域です。

高水敷(こうすいじき)、低水路(ていすいろ)
 高水敷は、複断面の形をした河川で、常に水が流れる低水路より一段高い部分の敷地です。平常時にはグランドや公園など様々な形で利用されていますが、大きな洪水の時には水に浸かってしまいます。

堤内地(ていないち)、堤外地(ていがいち)
 堤防によって洪水氾濫から守られている住居や農地のある側を堤内地,堤防に挟まれて水が流れている側を堤外地と呼びます。昔、日本の低平地では、輪中堤によって洪水という外敵から守られているという感覚があり、自分の住んでいるところを堤防の内側と考えていたといわれています。

側帯(そくたい)
  堤防を安定させるため、または非常用の土砂などを備蓄したり環境を保全するために、堤防の裏側(堤内地側)に土砂を積み上げた部分のことです。

法勾配(のりこうばい)
 護岸や堤防などの斜面の部分の勾配(傾斜、傾き)です。直角三角形の鉛直高さを1としたときの水平距離がnの場合、1:nと表示します。たとえば1:2は2割勾配,1:0.5は5分勾配というように特殊な言い方をします。ちなみに、2割勾配は5分勾配よりも緩やかです。

複断面、単断面(ふくだんめん、たんだんめん)
 単断面は高水敷がなく、低水時も高水時も水面幅に大きな差がない構造です。一方、複断面には高水敷があり、高水時の水面幅が低水時の水面幅に比べて大きく広がる特徴を持っています。これは、高水敷の上では水面幅が急激に広がることによって、流下する水の水深が浅くなり流速(流れる速度)も遅くなります。ですから、洪水時に堤防を守るために好都合だといえます。

小段(こだん)
 堤防が高くなるとのり長(斜面の上下方向の長さ)が長くなるので、のり面の安定性を保つために、小段と呼ばれる水平な部分を設けることがあります。小段は、維持補修や水防活動といった作業を容易にする役割ももっています。

輪中堤(わじゅうてい)
 ある特定の区域を洪水の氾濫から守るために、その守りたい周囲だけを囲むようにつくられた堤防です。輪中堤は江戸時代につくられたものが多く、木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)の下流の濃尾平野の輪中が有名です。

越流堤(えつりゅうてい)
 洪水調節の目的で、堤防の一部を低くした堤防です。越流堤の高さを超える洪水では、越流堤から洪水の一部分を調節池などに流し込む構造になっています。ですから、越流堤は流れの作用で壊れないよう表面をコンクリートなどで覆うなど、頑丈な構造となっています。

霞堤(かすみてい)
 霞堤は、堤防のある区間に開口部を設け、その下流側の堤防を堤内地側に延長させて、開口部の上流の堤防と二重になるようにした連続させていない堤防です。戦国時代から用いられており、霞堤の区間は堤防が折れ重なり、霞がたなびくように見えるようすから、こう呼ばれています。霞堤には2つの効果があります。1つは、平常時に堤内地からの排水が簡単にできます。もう一つは、上流で堤内地に氾濫した水を、霞堤の開口部からすみやかに川に戻し、被害の拡大を防ぎます。

二線堤(にせんてい)
 本堤背後の堤内地に築造される堤防のことをいい、控え堤、二番堤ともいわれます。万一、本堤が破堤した場合に、洪水氾濫の拡大を防ぎ被害を最小限にとどめる役割を果たします。

遊水地(ゆうすいち)、調節池(ちょうせつち)
 洪水を一時的に貯めて、洪水の最大流量(「ピーク流量」という)を減少させるために設けた区域を遊水地または調節池と呼びます。
 遊水地には、河道と遊水地の間に特別な施設を設けない自然遊水の場合と、河道に沿って調節池を設け、河道と調節池の間に設けた越流堤から一定規模以上の洪水を調節池に流し込む場合があります。

水制(すいせい)
 川を流れる時にうまれる水の浸食(しんしょく)作用などから河岸や堤防を守るために、水の流れる方向を変えたり、水の勢いを弱くすることを目的として設けられる施設です。
 形状としては、水の流れに直角に近いものから、平行に近いものまでいろいろあり、また構造としても、水が透過するように作られたものから、水を透過させないように作られたものまであります。もとめられる機能に応じていろいろな形状・構造のものがあります。

樋門(ひもん)、樋管(ひかん)、水門(すいもん)
 堤内地の雨水や水田の水などが川や水路を流れ、より大きな川に合流する場合、合流する川の水位が洪水などで高くなった時に、その水が堤内地側に逆流しないように設ける施設です。
 このような施設のなかで、堤防の中にコンクリートの水路を通し、そこにゲート設置する場合、樋門または樋管と呼びます。樋門と樋管の明確な区別はなく、機能は同じです。また堤防を分断してゲートを設置する場合、その施設を水門と呼びます。水門を堰と混同される場合がありますが、水門はゲートを閉めた時に堤防の役割を果たします。

堰(せき)
 農業用水・工業用水・水道用水などの水を川からとるために、河川を横断して水位を制御する施設です。頭首工(とうしゅこう)や取水堰(しゅすいぜき)とも呼ばれます。堰を水門と混同される場合がありますが、ゲートを閉めたときに堰は堤防の役割を果しません。

排水機場(はいすいきじょう)
 洪水時に樋門などを閉じてしまうと堤内地側に降った雨水が川へ出ていかないので、この水を川へくみ出す施設が必要となります。これが排水機場と呼ばれるもので、施設の中ではポンプが稼動して、堤内地側の水を川へ排出しています。

河道(かどう)
 河に水が流れている部分。みおすじ。
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