美しい国土づくり
美しい国土づくり
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 本シンポジウムを地方でやるときに、最初にこの東北の地が選ばれたということについても、私は我が意を得たりという気持ちでいっぱいです。
私の仙台の街に対する第一印象は、約10年前に青葉通りのホテルに泊まり、朝目覚めて窓のカーテンを開けると、一面緑だったのです。
ケヤキの葉がずっと繁っていて、「森の中にホテルが建っていたかな。昨日は夜に来たからよく分からなかったけど、まるで森じゃないか」と思ったのが最初の印象でした。
それ以来、仙台の街というのは、ひときわ落ち着いた美しい街の一つではないかという印象を持っているわけです。
 その東北に平成7年から局長として赴任し、最初の仕事で会津へと向かったのですが、一面すばらしい紅葉でした。
私の出身地の京都の嵐山の紅葉も見ていますが、その数百倍、何千倍というスケールで、非常に雄大な紅葉でした。
また、八幡平の紅葉、山形の峠では両側の山が一面紅葉の中で、遠くに白く雪を頂いた月山など、神々しいとしかいいようのないような光景でした。
また、若葉がすばらしい。夏になり、若葉が青くなっていく光景。雪解けの川も清冽な流れが水量豊かにあります。四季折々の山の美しさ、これはやはり東北ならではの美しい自然ではなかろうかと思います。
また、自然だけでなく山形県の金山町では、町の職員の顔が輝いていることに感心しました。「地元の金山杉を使った住宅を建てよう」「いい町をつくるんだ」「美しい町をつくるんだ」という意識を強く感じました。
 これからは心の時代と言われますが、東北は物質的な機能・経済の面で、日本の中では最後尾のランナーであったとしても、心の時代ということでは、東北はトップランナーであると思っております。
戦後50年、我々はあまりにも機能・効率主義で走り、生活又は物質面では豊かになりましたが、「美」についてはかなりおろそかにしてきたと思います。
国民の心のあり様と国土の美しさは、町の美しさとそこに住む人の心のあり様と非常に深く連動しているのではと東北時代に非常に深めたわけです。
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 その後、本省にて事務次官を拝命し、年頭の記者会見で「今年の抱負は何ですか」という質問に、私は迷わず「美(うま)し国づくりをやりたい」と申し上げました。
「美し」というのは、美しいだけでなく物質的な豊かさも全部含めた言葉です。ですから、国土交通省の政策は、一言で言えば「美し国づくり」になるのです。
「美し国づくり委員会」の中では、みんなで議論を行い共通の目標に向い熱心に議論していただきました。その結果が「美しい国づくり政策大綱」なのです。
 実際にはこれからの実践が一番大切です。そのためには、地域住民の方、地方公共団体や国の方、さらにはNPOやボランティアの方みんなが美しい町を目指し、心を合わせることが最も大切なことだと思います。
東北はもっともっと美しい町になり得る可能性と、みんな心を磨く素地があると思います。これからの東北に非常に期待しております。
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 プロフィール PROFILE
◆青山 俊樹(あおやま・としき)
京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。
'69年、建設省入省。近畿地方建設局姫路工事事務所長、大臣官房技術調査室長、中部地方建設局企画部長、河川局開発課長、東北地方建設局長、河川局長、技監を経て'02年、国土交通事務次官に就任。'03年、退官。