美しい国土づくり
事例報告「東北地方整備局における美しい国土づくり」
渡辺 祥子-フリーアナウンサー 渡辺 祥子  市民は、歴史・文化的価値を再認識して、それらを伝えるための活動をいろいろと行っています。 住民が動いても現時点では何もできないかもしれないけど、住民が声を挙げて動くことによって、いずれは行政を動かすのではないか。
 今の自分や人の個性というものは、生まれ育ったところにあるのではと感じています。
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◆渡辺 祥子(わたなべ・しょうこ)
大学時代、放送サークルに所属しながら地方放送局でアナウンスの仕事を経験。 OL生活を経て、平成3年にフリーアナウンサーとして独立。 生ワイド番組のパーソナリティーを初め、討論会「緑美しい都市実現に向けて(仙台市)」のパネリストとしても活躍。
小野寺 康-小野寺康都市設計事務所代表 小野寺 康  現行のシステムでは、着工後に専門家がかかわることができない。専門家として、デザイン監理はとても重要である。 住民参加で重要なのは説明責任であり、親切丁寧に説明し理解していただかないと、事業は地元に根付かない。 今後は、標準設計ではなく、一人ひとりが立ち上がらないと良い景観はできない。行政も専門家も、一人ひとりの幸せが全員の幸せとなるように努力していかなくてはならない。
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◆小野寺 康(おのでら・やすし)
東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修士課程修了。
株式会社アプル総合計画事務所を経て、'93年小野寺康都市設計事務所を設立。 「広島太田川河岸テラス」「門司港レトロ地区環境整備」など多数手がけ、2000年度、2001年度には土木学会景観デザイン賞優秀賞を受賞。
伊藤 友良-国土交通省 秋田河川国道事務所副所長 伊藤 友良  行政としては、常にコストを意識せざるを得ません。 景観に配慮した事業に取り組む中で、どう両立させるかが課題であります。 それには事業を進める中での専門家と行政の連携が重要であり、必要不可欠であります。 計画段階から住民と一緒となり、住民の意見を設計に反映させることが大事であると考えます。
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◆伊藤 友良(いとう・ともよし)
'73年、大曲農業高等学校専攻科卒業後、 建設省入省。福島工事事務所 建設監督官、仙台工事事務所 設計課長、工務第二課長、能代工事事務所 副所長を経て、'03年より現職。
青山 俊樹-前・国土交通事務次官 [コメンテーター] 青山 俊樹  明治・大正・昭和初期の構造物を美しいと思うのは、皆さんが一生懸命考え、手づくりで造ったものだからと思います。 それは、手づくりのまちづくりにもつながります。 「美しい国づくり」については、既に動いていますが、実は始まったばかりです。
 これから、みんなで一緒にやっていただければと思っています。
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◆青山 俊樹(あおやま・としき)
京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。
'69年、建設省入省。近畿地方建設局姫路工事事務所長、大臣官房技術調査室長、中部地方建設局企画部長、河川局開発課長、東北地方建設局長、河川局長、技監を経て'02年、国土交通事務次官に就任。'03年、退官。
伊藤 寛-前・三春町長 伊藤 寛  地方においては、景観行政は難しいものです。景観に配慮した事業では、コストも時間もかかるため評判はよくありません。 ただ、町民・行政がこだわりを持ってまちづくりを考えていくことに意味があります。 住民と行政が一緒になり、景観に配慮して造ったものは、人々の関心が非常に強いものとなり、自然と住民の方々にまちを愛する心が生まれると思っております。
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◆伊藤 寛(いとう・ひろし)
一橋大学経済学部卒業後、地元の農協に勤務。農林中央金庫勤務、三春町助役を経て、'80年三春町長に就任。 小さな城下町の(歴史と文化に根ざした)中心市街地活性化、さくら湖自然観察園の構築、町民参加のまちづくり地方分権に対応した行財政改革等、斬新なまちづくりを進める。 '03年、奥さんの介護のため任期を前に町長を辞任。
篠原 修-東京大学教授[司会・コーディネ−ター] 篠原 修  住民と専門家と行政が、それぞれの特色をどう発揮しながら協力し、美しい都市・地域をつくっていくか。これまでは住民も行政も議論を避けてきた。 これからは住民・専門家・行政が三位一体とならないと良い景観は生まれない。そこに住む住民にしか分からない歴史・風土があり、それらの情報が入ることで、デザインは深みを増すのです。
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◆篠原 修(しのはら・おさむ)
東京大学大学院工学系研究学科土木工学専攻修士課程修了、工学博士。
(株)アーバンインダストリー、東京大学農学部助手、建設省土木研究所主任研究員、東京大学農学部助教授、同工学部助教授を経て、'91年より現職。
『土木景観計画』『街路の景観設計』など著書多数。
パネルディスカッション-風景 パネルディスカッション-傍聴風景
まとめ/篠原 修
 住民の方には行政・専門家の仕事をきちんと見ていただきたいと思います。また、専門家・行政はデザインや説明能力といった腕が鈍らないように常に努力していただきたい。それから、行政は住民参加や専門家に任せっきりの責任放棄はしないでもらいたい。
 景観やデザインに欠かせないのは教育である。目先の新しい物にとらわれることなく、一人ひとりが景観に対する目を鍛えていただきたい。一般市民への情報ということでは、マスコミにも勉強をしていただきたい。