
阿武隈川は、福島・宮城両県にまたがる幹川流路延長239qの我が国第6位の大河川です。 阿武隈川の変化に富む自然や景観は古くから地域の人々に親しまれ、その流れは、流域内の社会・経済・文化の形成に欠くことのできない重要な役割を果たしてきました。しかし、一方では、過去幾度と無く洪水氾濫を引き起こし、当地域に甚大な被害をもたらしてきました。特に近年では、戦後最大規模の洪水となった昭和61年8月洪水をはじめ、平成10年8月末洪水、平成14年7月洪水など大規模な洪水被害が頻発しています。
平成10年8月末洪水では、堤防や護岸などの総合的な河川整備を短期間に集中実施する「阿武隈川平成の大改修」が実施され、それまでは著しく低かった河川の整備率が、一定の水準にまで向上しました。
これにより、平成14年7月の洪水では洪水被害の軽減に大きな効果を発揮しました。しかし、阿武隈川全体をみると未だ整備途上段階にあるため、安全度が不足している箇所が多く存在しています。戦後最大の昭和61年8月洪水と同規模の洪水が今発生した場合、甚大な洪水被害の恐れがあり計画的な治水対策を実施していくことが必要です。
河川環境の面では、松尾芭蕉の奥の細道でも詠われた日本の滝百選「乙字ケ滝」や阿武隈川ライン舟下りなどかつての舟運の名残をのこす「阿武隈渓谷」、さらにはサケや天然の鮎が遡上・産卵するなど阿武隈川には豊かな自然環境、生態系が残されています。これら、豊かな自然環境を次世代に引き継ぐため、流域が一体となって保全に取り組む必要があります。
阿武隈川の豊かな自然環境、歴史、文化、風土を背景として、流域内の様々な人・団体が阿武隈川において多様な活動を展開しています。このため、人と河川とのかかわり、ふれあいの場を適切に整備・保全していくことや、河川愛護団体など流域の様々な団体間のパートナーシップを構築するなど、阿武隈川を軸とした参加と連携による地域づくりの推進が求められています。

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