●全体としてこの整備計画原案は他の河川流域に比べて非常によくできていると思う。法定計画なので目次は大体同じだが、内容は阿武隈川らしいものがきちんと入っていて、例えば101ページの健全な水循環系の構築に向けた調査研究などはあまり他の整備計画にはないわけで、そういうことも含めて、非常にわかりやすく書かれていると全体の評価として思う。
原案10ページに阿武隈川流域内の人口の推移があるが、阿武隈川の変化は大正頃から始まったかどうかはわからないが、昔の姿を見て今を考えるということがあるので、もう少し古い資料、戦前からの人口の推移を作成していただいているのでぜひそれを入れていただきたい。
原案122ページで、いわゆる土地利用との関連を入れられたのは非常にいいことだと思うが、その図のタイトルが「災害危険区域の指定について 土地利用一体型水防災事業」とあるが、この水防災事業というのは一般の人には非常にわかりにくい特殊な用語である。ここも主旨を表すようなタイトル、例えば「土地利用規制とそれに対応した治水対策の例」など素直なタイトルにすれば、ここで取り上げた主旨がわかりやすく伝わると思う。
●原案122ページ本文中に地方自治体という言葉が出てくる。大学の研究者は地方自治体という言葉を平気で使うが、国の方で地方自治体という言葉でよろしいのか。下の図では、地方公共団体になっている。ここは何か使い分けをしているというふうに理解をしてよろしいか。
●特に意識して使い分けているわけではない。どちらかに統一したほうがいいと思うのでそのようにさせていただく。
●パブリックコメントの中で30年計画といわず早く実施してくれという注文があったりする。計画というのはその期間内に何の事業を実施するかというのが日本の場合はすごく多く、それを早めにやってくれというのが至極当然の要求になってしまい、ある意味では偏った側面が強調されるようになってしまうが、河川や都市計画というのは、50年続くような内容もあるし、極端に言うと100年も引きずる、永劫に引きずる、これを節目をつけて計画を作るという内容もたくさんある。そういう計画というのは、節目の中で何を地域の人達や地方自治体が展開し、未来永劫に向かって取組んでいくという要素もあるので、獲得目標だとか事業の実現だけを主張しているのではないという計画の側面があるということも理解していただく工夫が必要。
●原案をどうするかではなく、原案をどうやって利用する人に知らせていくかということが、結構大事な宿題だろうと思う。
●全体的に非常によくまとまってきているのではないかと思う。ただ水質の点で考えてみると、原案53ページの環境基準の類型指定のようにBODで考えるのは20世紀だったと思うが、やはり、窒素、リンがもたらす一次生産があり、一次生産というのは有機物を作るということに関連してくる。有機物ができるということは、結局BODを高めるということにも関わってくる。そういった面で、ここでの環境基準の類型指定状況はこのような形で出さざるを得ないと思う。一方、窒素、リンは今後重要な課題である。例えば原案57ページにT-N、T-Pの平均値が出ている。これは単に濃度ばかりではなく、流量を加味した負荷量で出すことを検討いただきたい。源流そのものが持っている負荷量に対し、いかに下流の方で窒素、リンの負荷量が高くなっているかということがわかってくると思う。
●原案58ページの図3-27ダム湖水質の経年変化グラフについて、COD、BOD、大腸菌群数これも大事だと思うが、七ヶ宿ダム、三春ダムもそうだが、湖沼については富栄養化現象が問題となることから窒素、リンも水質項目としてぜひ入れておいていただきたい。
●この原案から附図がついているが、附図の利用の位置づけとそれを引用した場合の見方を教えていただきたい。
この附図がつくと、地先の問題になってくるので、全体の整備の問題と地先の問題が合体しているというところで、ある程度整理の仕方というのを考えておかないと、おそらくこれが30年のバイブルになってくるというと、ここの地先の家のところにはこういう問題が入っていないじゃないかというところに必ず話が発展するので整理をうまくしていただきたいと思う。
●附図について、河川整備計画で必ず合本し、作成することになっており、附図の位置づけについては、30年で実施する具体的整備内容ということで、自分のところではどういう整備が行われるか理解しやすいように、ある程度縮尺の大きい図面を用いて作成している。
附図の位置づけについては、注釈をつけ、本文との関係がわかるように修正したい。
●資料-5共通6に出てくる、節目節目での情報の交換をお願いしたいという意見はその通りで、節目節目にこういう、パブリックコメントの機会は持ったほうがいいと思うが、最終的に工事段階になると、工事業者と住民とのコミュニケーションになってくると思うが、仕様書の段階で要求することは可能なのか。可能であればやった方がいいと思うが。
●一般的に工事に入るときは地元で説明会を開く。実際に工事が始まった中でいろいろな地先からの要望が施工業者に出る場合もあるが、業者も当然ながらお答えしながら実施していくという形になる。その声が非常に大きな話であればまた説明会のような形で開くこともあるかと思う。コミュニケーションを契約上つけるというのは、一般的には行っていないが、当然そのようなことは行っていただかなければということで指導はしている。
●漁業関係者との連携が外来魚の記述のところで出てくるが、環境教育のところにも関係してくると思うが、実は阿武隈川漁協というのはおそらく全国の内水面の組合で見ても非常に活発な活動をしていると思う。漁業協同組合の役割、漁業協同組合という単語自体、これには出てこないが、十分考えられた上で出さなかったということはあるかもしれないが、阿武隈川の組合というのは、全国でも自慢できる組合だと思うので、環境の教育や外来種の対策の項で具体的な名前や活動等を出してもよろしいのではないか。
●原案68ページの表の中にイベント一覧の中に阿武隈川塾という活動を掲載しており、主催として阿武隈川漁業協同組合を記載している。
●原案63ページで阿武隈川の注目すべき種というところの選定の視点の依存度ということだが、カジカというのは依存度が高いという意味では非常に繊細な魚で綺麗な水でないと生きていけないという意味だと思うが、その一方で、鳥類、カワウというのも出ていて、この依存度というのがどういう意味なのか理解できない。
その他、この表の中の種名でシラウオを記載しているが、ハゼ科のシロウオが河川の淡水域まで依存している種類ではないか。出典がわかればこちらも確認しようがあるが、引用文献がないので確認のしようがない。
●原案68ページ 地域との連携に関係する部分、113ページ環境教育の支援、河川愛護の啓発ということで考えると、川のひとつの理想像というのは泳げる川ではないかと思う。そういった面で、ここで泳いでもいいよという川の部分を少しずつ広めていくというような方向で検討いただきたいと思う。
●整備計画はこれまで実施してきたような様々な手続きの段階を踏んで策定しているということを、読む際に理解できるよう、参考的な記述があった方が良い。
●地域の住民から、数多くの意見が出されているが、素案に含まれるということで、新たに反映する意見が1つもないというのはどうか。特に資料5の治水-11の意見は非常に良い意見であり、何らかの反映はした方が良い。 |