「五月雨を集めて早し最上川」(『おくのほそ道』より)
大石田の高野一栄方に滞在中、四吟歌仙の発句として作ったものの改作です。初案は「集めて涼し」で、涼しい風を運んでくる最上川の豊かさやさしさを表現しました。しかし、本合海から急流の最上川下りを体験し、「涼し」を「早し」に改め、最上川の豪壮さ、激しさを表記したのです。句意は「降り続く五月雨(梅雨の雨)を一つに集めたように、何とまあ最上川の流れの早くすさまじいことよ。」
「暑き日を海に入れたり最上川」(『おくのほそ道』より)
6月、酒田の寺島彦助亭で、歌仙の発句として作りました。句意は「(ようやく夕方になったが、)暑い一日を海に流し入れてしまった最上川(その河口のあたりから涼しい夕風が吹いてきた)」。

松尾芭蕉銅像(山形市山寺) |
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松尾芭蕉[まつお・ばしょう](1644〜1694)
江戸時代の俳人。伊賀の武士出身で、わび・さびで示される幽玄閑寂の独自の俳風を確立。芭蕉の生涯は日本各地を旅して、名所旧跡を回り、歌枕(古来、和歌の題材になっているもの)を巡り、様々な人とまじわっている。それは、『笈の小文』『更級紀行』『野ざらし紀行』などの書物に残され、最も有名なのは晩年の『おくのほそ道』である。門人曽良を伴い、江戸を出発し、東北・北陸を巡り岐阜県大垣へ至る2400q、161日間の旅を紀行文として完成させたものだが、その中で最上川を詠んだ、これらの句はあまりにも有名。
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