揮発性有機化合物(VOC)

 近年、新築や改装をされた建物における、空気中の化学物質が話題となっています。これに合わせ住宅メーカーや建材メーカーも、競って「自然素材」「ノンホルム」などを謳った商品を発売しています。これらの話題のなかで問題とされている、VOCやシックハウス症候群とはどういったものなのでしょうか。
 

1.シックハウスの原因
 揮発性有機化合物(VOC)とは、塗料の溶剤や内装材の接着剤などとして使用され、その後次第に空気中に放散される化学物質の総称です。代表的なものに、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエンなど、皆さんもその名を聞いたことが有るであろう物質が挙げられます。目がチカチカする、気分が悪いと言った症状(シックハウス症候群)は、これら有害成分が原因とされています。
 

2.空気中濃度の基準
 室内におけるこれら物質の濃度が、人体にとって有害であるかどうかの判断基準として、厚生労働省の化学物質濃度指針があります。この指針の対象となる化学物質は、現在十数種類にも上っています。現在ホルムアルデヒドなどの濃度の測定は、民間の測定機関に依頼して行うことも出来ます。
 東北地方整備局でも、今後の維持管理及び改修手法の参考とするため、施設をいくつか選定し室内空気環境の測定を行いました。結果極少数でありますが、ホルムアルデヒドの測定値が指針値(0.08ppm)を超える施設がありました。原因として次のような理由が考えられます。

  •  小規模な部屋であるため、内装材や家具から放散されるホルムアルデヒドが、空気で希釈されずにいること。
  •  使用頻度が低い部屋、換気等が十分に行われていないなどの原因で、空気中のホルムアルデヒドが室外に十分に排出されていないこと。

 対策としては、換気をまめに行うことが有効です。

 

3.化学物質過敏症
 これはシックハウス症候群とは似て非なるものです。シックハウス症が化学物質自体の有害性で起きるのに対し、化学物質過敏症は通常無害の物質でも起こり得ます。こちらは一種のアレルギーであり、化学物質に長時間、あるいは高濃度でさらされたことが原因といわれています。ただし、詳しいメカニズムなどは解明されていないそうです。
 業務のなかで、空気に放散する薬剤などに長時間接している場合、何らかの対策を取った方が良いのかもしれません。
 

4.天然素材建材
 建築関連メーカーでは、有害VOCゼロを目指して様々な製品開発を進めています。その一例として、天然の素材を原料とした壁紙や塗料があります。代表的な原料には、ホタテの貝殻、もみ殻並びに海藻などが挙げられます。これら原料を粉末にして混入した製品の中には、VOC非含有、空気中VOCの吸収分解などの特長を持っているものもあります。また調湿性なども有ると言われます。

 しかし、これらの天然原料を活用した建材全てが、実用までこぎ着けているわけではありません。多くの製品において、カラーバリエーションの制限、コスト高など課題を抱えています。それでも、VOC対策のほかに、不要物のリサイクル手段としてのメリットもあり、これら製品の実用化に期待がされています。


建築部位別解説の一覧へ保全のちえぶくろのページへ